業績急回復で見えてきたパワービルダー(低価格分譲戸建て会社)の課題
大工や職人の工賃も「安いが、仕事を連続的に発注する」(アイディホーム)仕組みだけに、回転率は高い。用地の購入から施工、販売までを1回転とすると、「現在、年間で2・8回転。1棟を130日くらいで引き渡せるため、用地在庫も半年分以上は持たない方針だ」(一建設)。
こうしたローコスト経営を身上とするパワービルダーだが、用地を先行取得する難しさは何度も味わった。特にリーマンショック直後は、高値で仕込んだ土地在庫に苦しみ赤字企業が続出。そのため現在、各社とも土地の保有期間が長期化するマンション事業をほぼ凍結。低価格を武器に注文住宅にも進出している。
業績は急速な回復局面にあるとはいえ、その先には懸念もある。一つは業界でささやかれる「大工不足問題」だ。木造住宅の大工は高齢者が多く、若い就業者は不足ぎみ。アーネストワンでは子会社で大工の養成を開始しているが、固定費拡大というジレンマにつながる。
プレカット化など施工の単純化も進めているが、気になるのはこうした省力化が品質を劣化させないかということだ。07年にも設計段階のミスで壁量不足問題が発生した。こうした点について建物調査を専門とするさくら事務所の長嶋修社長は「設計品質は以前に比べ格段に上がった。ただ設計どおり造れば問題ないが、まだ現場によってバラツキがある」と指摘する。
現在、パワービルダーは大手ハウスメーカー同様、00年4月施行の品確法や08年4月施行の瑕疵担保履行法で住宅の性能や不具合に対し、管理責任を問われるようになっている。一方で、持ち前のローコスト化と回転率向上に積極的な姿勢も不変だ。双方の関係をトレードオフにせず、どこまで成長することができるのか。大手ハウスメーカーを業績で大きく引き離す現在、パワービルダーは新しい領域に入ったと言えそうだ。
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(日暮良一 =週刊東洋経済2011年3月5日号)
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