家族の最期「ありがとう」は生きている今、伝えて 残された日々に「死なないで」と言うのではなく

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そして僕がもっとも力をいれている家族ケアは、ご家族が患者さんの人生を一緒に振り返ってあげること。楽しかった思い出を語り、歩みを讃えて、感謝を伝えましょう。必ず「いい人生だった」と返してくれるはずです。「こんなはずじゃなかった」と苦しみながら病院で意識がなくなっていくのと、家族や親しい人たちに囲まれて「いい人生だった」と言えるのでは、それこそ天国と地獄ほどの違いがあります。

惜しみなく感謝を伝えてください

それから父や母を看取るならば、「親父、ありがとね」「お母さん、生んでくれてありがとう」と伝えましょう。生んで育ててもらったことに対して感謝の言葉を伝えることが、僕は一番の親孝行だと思います。

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大人になった子どもたちの感謝の言葉に、夢中で子育てをしていた若き日の自分を思い出したという女性の患者さんは、「人生、悔いなし」と笑っていました。親子だけではなく夫に妻に、惜しみなく感謝を伝えてください。お嫁さんから、「玉のような男子を生みまして、立派に育て上げ、私にくださいましてありがとうございました!」と言われて、二人で泣き笑いした患者さんもいます。

「ありがとう」と言ったら亡くなるみたいでいやだ。もっとぎりぎりになってから……と躊躇するご家族もいますが、亡くなることに気づいていない患者さんなんていません。皆さん、自分の死をわかっています。ぎりぎりになったら、きっとあっという間です。骨になってしまったら、感謝は伝わりません。「ありがとう」は、生きている今、伝えてください。何回でもいいんです。

前回:がん通院1年、65歳彼が自宅で迎えた穏やかな最期(6月30日配信)

萬田 緑平 在宅緩和ケア医、緩和ケア萬田診療所所長

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まんだ りょくへい / Ryokuhei Manda

1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。群馬大学付属病院第一外科に所属し、外科医として手術、抗がん剤治療、胃ろう造設などを行うなか、終末ケアの大切さを痛感。2008年在宅緩和ケア医に転身して緩和ケア診療所に勤務後、2017年、がん専門の緩和ケア 萬田診療所を開設。亡くなるまで自宅で暮らしたい人を外来診療と訪問診療でサポートする。

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