がん通院1年、65歳彼が自宅で迎えた穏やかな最期 在宅緩和ケアを選び「亡くなる18日前までゴルフ」

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痛みをコントロールして自宅で穏やかに生き抜く。末期がん患者の希望を叶えた在宅緩和ケアの現場で医師が見届けた最期とは?(写真の人物は本文と関係ありません、写真:8x10/PIXTA)
終末期を迎え病院でチューブに繋がれながら最期を迎えるか、それとも自宅で穏やかに逝くのか。
つらい治療は望まず、生きる気力を持ち続けて自宅で穏やかに最期を迎えた人たちとその家族のリアルな日々を紹介する、元外科医で在宅緩和ケア医・萬田緑平氏の新著『穏やかな死に医療はいらない』より一部抜粋、再編集してお届けします。

歩けることが生きる気力を引き出す

僕の診療所「緩和ケア萬田診療所」はがん患者さん専門の在宅緩和ケアを行っています。緩和ケアは死に直面した患者さんやそのご家族の心身の痛みを予防したり、和らげたりすることを言いますが、僕は最期まで自宅で暮らしたいという患者さんの緩和ケアを、診療所の外来とお宅への訪問で行っています。患者さんは抗がん剤治療をやめた人や治療法がないと言われた人、入院したくない人、早期から緩和ケアを受けたい人たちで、患者さんの半分は外来通院です。

診療の方針は患者さんの意志を最優先すること。そしてがんの腫瘍を抱えながらも心と身体が弱らないように工夫しながら、自宅で自分らしく粘り強く生きる患者さんとそのご家族を支えます。数年間、自力で外来通院をして、訪問診療は亡くなる日だけという患者さんが何人もいます。がんと診断されたときから亡くなるまで、最長で7年間お付き合いした患者さんもいました。

診療所の外来診療の時間は1人1時間です。外来通院している患者さんとの話は、だいたいが「どうやって歩いて棺桶に入るか」です。痛みがある人は医療用麻薬の使い方を勉強することから始まります。

目的は歩くこと。僕は患者さんが歩けることに徹底的にこだわります。がん患者さんの終末期を長く診ていると、生きる力の根源は気力だと思わずにいられません。その生きる気力を引き出すのが歩けることなんです。

歩けなくなると、今日できていることのほとんどができなくなります。トイレに行けない。おむつになる。この現実が生きるつらさになってしまうのです。だから僕は外来で患者さんにハッパをかけます。

歩けなくなったら死んじゃうよ。でもがんばって歩いていれば死ぬまで歩けますよ。歩いているうちは死なないよ。死ぬ前日まで歩きましょう。歩いて棺桶に入りましょう——。

「死ぬ」「死ぬ」の連発ですが、患者さんのリアルな恐怖はそんなことよりトイレに行けなくなること。だから、「目的は亡くなる前日までトイレに行くこと!」と言うと、ほとんどの患者さんは目を輝かせます。「そんなことが可能なんだ!」と。

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