元警官のカレー店主がディズニーで下積みした訳 52歳早期退職、聞き込みのごとく情報集め開業した

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会社員は戦術的な面やオペレーションにしか関心が向かない傾向がある。また、組織の中では分業制が基本なので、全人格的な対応までは求められない。このため、目標が漠然としたまま情報を収集したり、安易に資格を求めたり、練習の真似事などに注力して、かえって次の転身先が見えにくくなる。

個人事業主の商売感覚

まずは個人事業主として、自分の力量が発揮できる場所の把握と分析、および自ら立てた戦略を実行していくことが求められる。これらを商売感覚と呼んでもいいだろう。プロの歌手にたとえるなら、音程を外さず歌が上手でも、それだけでは売れない。自分の個性が発揮できる場所や喜んでもらえる相手を探し出してうまく対応する必要がある。

言い換えれば、自分だけのニッチ(隙間)市場を見つけて、そこに自分の持つ資源を重点的に投入するのだ。対象を絞り込んで個人事業主として市場やマーケットから富(必ずしもお金に限らない)を得る。これは単にデザインや執筆のようなクリエイティブな仕事だけに限らず、サービス業や製造業などの分野においても実現できる道はある。また対象についても、事業的なことだけにとどまらずに、趣味の延長、地域活動やボランティア、自らの学びの中にも見出すことができる。

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戦術部分に特化しがちな会社員は、まずは自分の顧客を探すことだ。自分の持っている資源と相手が求めているものとの関係の中から顧客を決めるのである。

具体的行動としては、その分野のトップの人の話を聞きに行くことが有効な場合もあるだろう。私の場合、一時期は講演会マニアのように聞きまくっていた。興味や関心のある人に会いに行くことだ。自分が想定する顧客に直接会って話を聞くのもいいだろう。

これらの場数を踏みながら、どれぐらい相手に伝わるのかを、何度も何度も繰り返しながら進めていく。最終的には、相手から「この人じゃないと困る」「彼なら大丈夫」というように信頼されることがベースになる。信頼がなければいくら発信しても相手には響かない。また、それはノウハウやスキルの延長線上にあるものではない。

前回:山崎邦正⇒月亭方正の転身の裏に見た絶妙な導き(6月25日配信)

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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