元警官のカレー店主がディズニーで下積みした訳 52歳早期退職、聞き込みのごとく情報集め開業した

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警察官からカレーショップの店主というだけでインパクトのある転身であるが、そのプロセスにおいては、今まで述べてきた商売感覚や顧客の絞り込みがないとうまくいかない。

一口にカレーと言っても多種多様である。吉野さんは自分が小さい頃に憧れた銀色の皿に盛りつけられた欧風カレーを目指した。そこから対象とする顧客層や店の立地も検討した。

顧客対応を学ぶために東京ディズニーシーでほぼ1年間キャストとして働いた。警察組織はもともと笑いが少ない職場である。それと対照的な最高峰の顧客サービスを学ぼうと週に5日、入場ゲート近くで主にお客さんを迎える仕事に取り組んだ。実際に体験して開店後の顧客対応に役立てようと考えたのだ。

東京では、カレー激戦区と言われる神保町をはじめ、1年に200食ぐらいカレーを食べ歩いた。京都に戻ってからは、調理法や衛生管理、品質保持を学ぶため、いくつかのカレー店でアルバイトとして働いた。

新たにカレー店を開店するには、仕入れ先も決めなければならない。そこで吉野さんは、京都の飲食店の前に停まっている食品卸の車をメモして、ネットで検索しながら仕入れ先を検討した。警察の聞き込みでやっていたことと基本は同じだという。また、京都の中央市場の青果店には飛び込みで話を聞きに行った。その店とは今も取引が続いている。

食材はすべて自ら吟味して納得のいくものだけを使用

退職の2年後の2014年に、欧風カレーを提供する念願のカレーショップを開業した。店のすべての食材は、吉野さんが自ら吟味して納得のいくものだけを使用している。

開店後は順調に店を切り盛りしてきたが、コロナ禍の影響はやはり大きい。店舗は京都のビジネス街の一角にあるが、会社のリモートワークなどで、行き交う人の数も一気に減った。今後は状況を見ながら店舗を運営するやり方を検討していく必要があるという。

最後に、警察官の時と現在のカレー店主との違いを聞いた。自分で決めることができることは何物にも代えがたい。ストレスは警察官の時と全然違う。自分でやりたいことがあればぜひ新たな人生に向かって飛び出すべきだ。そう語ってくれた。

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