合理的!「部活を外部委託」する学校の緻密な手順 聖学院中学校・高等学校が行う改革の中身

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そこで考えたのが、スポーツクラブなど、地域でスポーツ活動を担う会社から指導員を派遣してもらうことだった。HPでそれらしい会社を探して片っ端から電話をしたが、予算が合わずに引き受け手が見つからない。お金をどう捻出するか。理事会にも掛け合う必要がある。

休日手当を指導員費に充てる

教員に取ったアンケートを基に、学校が手当を払うべき休日出勤日を調べたところ、教員全員分を合計すると年間で延べ約400回となった。労基法上、休日出勤は標準給与の1.35倍の支払いが必要なため、日当はおよそ2万円。つまり、年間で約800万円を払う必要がある。

日野田教諭はこの予算を外部委託費に充てることができないかと、理事会に掛け合った。導入に対して慎重な意見も見られたが、まずは、動かしてみることが決まり、部活指導の外部委託が2020年度からサッカー部と卓球部で試験的に始まった。

準備を進めていたところでコロナ禍に突入したため、取り組みは2020年夏から始めた。初年度は費用を学校がすべて負担し導入、翌年度からはその部活に所属する子の家庭から月5000円を指導員費として徴収することにした。

徴収に対しては保護者側からいろいろな意見もあったが、丁寧に説明することで一定の理解を得た。指導してくれるのは元Jリーガーなどサッカー指導のプロだ。サッカーの指導だけにとどまらず、部室をきれいに保つなど、ほかの面での指導も一流だった。

プロの指導者から指導を受けたことで、生徒のやる気が上がったのはもちろん、ユニフォームを自分で洗うようになるなど、自宅での振る舞いにも変化が表れたことで、保護者の意見も変わっていった。指導員の制度を導入後はじめて迎えた夏、7試合の練習試合を行うと5勝2敗と勝率も上がった。「まずは、2つの部で検証し、徐々にほかの部活もこの態勢に切り替えていこうと考えています」(日野田教諭)。

保護者の金銭的な負担があるという面は拭えない。だが、学校によっては、そのスポーツをさして知らない顧問が担当となり、指導されているケースもある。

部活動顧問の行きすぎた指導や、虐待などがニュースになる中、この取り組みは一定程度その抑止にもつながる。会社を通して派遣してもらうため、不適切な指導をすれば、会社側にコーチ交代を要請することができるからだ。つまり、監督の「部活王国化」を防ぐことにもつながるという訳だ。「子どものため」というマジックワードに隠された部活動を取り巻く不可解さ、この是正につながることも期待したい。

宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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