合理的!「部活を外部委託」する学校の緻密な手順 聖学院中学校・高等学校が行う改革の中身

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両教諭はこれが当たり前だと思っていたという。GWなどはむしろ「めっちゃサッカーができる! 生徒のためにやってあげなければ……」と思っていた。しかし、ふと振り返ってみると、自分が辞めたときにこれを引き継ぐ教員がいるだろうかという思いが湧き上がった。

自分たちは、「子どもたちのために」という思いでやってきた。だが、自分が退職したときに、引き取り手がいないとなれば、継続が難しくなるということを、ほかの部の状況を見て感じたのだ。

週の労働時間が40時間をはるかに超過

こうした中で2018年、同校の教員にアンケート調査を実施。結果、多くの教員が部活動顧問について負担感を抱いていることがわかった。社会的にサービス残業や過労による自殺が問題視されたこともあり、学校現場にも労働基準監督署の立ち入り調査が入り始めていた。部活動顧問の問題は、労務上の問題としても考える時期を迎えていた。

公立学校の場合、教員は公務員にあたるため、異なる基準となるのだが、私立の場合の法定労働時間は週40時間。繁忙期などを鑑みて、月単位や年単位で残業を考慮に入れる変形労働にしても47.5時間とされている。

試しに勤続10年以上、都内のある私立学校教員のケースを見てみると、朝8時に出勤し、15時50分に帰りの会が終了、16時から18時に部活動の指導をし、その後18時からは校内の会議に出席、帰宅したのは19時過ぎとなっていた。

ランチタイムを1時間省いたとしても、1日10時間労働。この日は朝練がなかったので、この時間で収まったが、これが日常だとすれば、週40時間をはるかに超えてしまう。私立学校の場合は週に1日、調整日を設けて休めるようにしているが、祝日や日曜日に部活動で出勤した場合の代休は取れない。

特に、習熟度別の授業を展開する学校では代休を取るのは難しくなる。ホームルームのクラス単位で授業を受ける従来方式ならば、代休を取った教員の分を別の教員の授業と入れ替えるだけですむ。

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