藤井聡太が熱戦「天空の対局場」とトヨタの深い縁 章男社長「ぜひともお役に立ちたい」と前のめり

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テープカット後、対局場が正式にオープンし、こけら落としとして佐藤九段と藤井五冠による第81期順位戦A級1回戦、杉本八段と佐々木七段による同B級2組1回戦の2局が行われた。藤井五冠は日付を越える熱戦の末に佐藤九段を下し、対局後のインタビューで「こうして対局場を用意していただいて、地元で対局ができるのをうれしく思う。初めてだったが、すごく快適に対局できた。これが東海地方の将棋界の盛り上がりにつながればいい」と語った。

トヨタ自動車の会議室に真新しい畳が張られた名古屋将棋対局場(写真:筆者撮影)

藤井五冠は愛知県瀬戸市出身で、小学生の頃から名古屋市内の杉本八段の将棋教室に通うなどして腕を磨いた。2016年に史上最年少の14歳2カ月でプロ入りを果たすと、公式戦を勝ち続け、17年6月には歴代最多の29連勝を達成。「藤井フィーバー」を巻き起こした。

高まる将棋熱に、地元では愛知県の大村秀章知事や名古屋市の河村たかし市長が「名古屋に将棋会館を」と公言し始めた。名古屋には囲碁の日本棋院中部総本部はあるが、将棋の公式施設はない。将棋会館構想には、藤井五冠ら中部地区の棋士が東京や大阪に通う負担を減らすとともに、将棋を通して地域活性化やイメージアップを図ろうとの狙いが行政側にあったのは明白だ。

しかし、新たな施設となると場所やコストのハードルが高くなる。しばらく具体的な計画の目処が立たないまま、コロナ禍に突入して1年ほど経ってから浮上したのが「トヨタ」の名だった。

上層部同士の「個人的なつながり」で急展開

もともとトヨタと将棋連盟は、豊田市のトヨタ関連施設で棋聖戦が開催されるなどの縁があった。加えて上層部同士の「個人的なつながり」(日本将棋連盟メディア部の常盤秀樹部長)から、今回の計画が急展開したという。

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