「化石燃料の投融資縮小」問われる株主提案の賛否 機関投資家も参戦、議決権助言会社の声が左右

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三菱商事について、ISSは「LNG(液化天然ガス)ビジネスの拡大が2050年実質ゼロの方針と矛盾しているように見える」と指摘。他方、グラスルイスは「同社は実質ゼロの方針や目標をきちんと開示している」として、株主提案への反対を推奨している。

一方、J-POWERについてはISSが3項目すべてで賛成を推奨。グラスルイスは報酬の方針に関する開示を定める定款変更を除く2項目について賛成を呼びかけている。賛成推奨の理由としてISSは、「老朽化した石炭火力発電所の廃止計画が存在しないことや座礁資産化リスクがあること」などを指摘する。

東電HDおよび中部電に対する株主提案についてグラスルイスは、「気候関連の破壊的影響に対しての資産の耐性をどのように確保しているかを開示することは株主の利益に資する」と賛成理由を述べている。ISSは、「東電HDの2050年実質ゼロ目標達成は、同社および中部電の火力発電合弁会社であるJERAによる取り組みの成否にかかっている。株主がその取り組みを検証するための気候関連の情報が必要だ」と指摘する。

カーボンニュートラル実現へ一段の取り組みを求めている点で、ISSとグラスルイスのスタンスは似ている。

株主提案に一定の支持も

マーケット・フォースのジュリアン・ヴィンセント代表は、「(私たちが株主提案の対象とした)4社はいずれも新たな化石燃料事業または関連の投融資に強く関与しており、気候変動がもたらす財務リスクにさらされている。4社とも2050年実質ゼロを念頭に置いての投資や融資の判断をしているとは思えない」と説明する。

また、イギリスの大手コンサルティング会社ブランズウィック・グループ東京事務所の金田テレザパートナーも、「2050年排出ゼロといった目標を示すだけでは不十分であり、その目標にたどり着くためにどのようにビジネスを変えていくかを投資家は知りたがっている。その点においてきちんとした開示がなされるかに注目している」と語る。

では、株主提案はどれだけの支持を得られるのだろうか。

株主提案の多くはパリ協定の目標と整合した事業計画の策定・開示を求めている。2021年までの株主総会で一定の賛成票を得ているほか、議決権行使助言会社の賛成推奨もあり、一定の支持を得られる可能性が高そうだ。

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