「化石燃料の投融資縮小」問われる株主提案の賛否 機関投資家も参戦、議決権助言会社の声が左右

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他方、エネルギー会社による火力発電所建設などの投資や銀行による化石燃料開発への融資と、実質ゼロ目標と整合性を求める提案がどれだけ賛成を得られるかは未知数だ。

IEAによる実質ゼロシナリオやパリ協定に即した排出削減目標と整合性を保とうとした場合、新たな化石燃料関連の投融資は事実上難しくなる。そのため、整合性を追求するなら企業の投融資に事実上の制限を設けることになる。

個人株主として三井住友FGの株主提案に共同参加した環境NGO350.orgの横山隆美日本代表は、「私たちが求めているのは短期・中期のしっかりした目標を策定し、明らかにしてほしいということ。化石燃料関連の投融資を今すぐ一切禁止しろと言っているわけではない」と説明する。

これに対し三井住友FGの取締役会は「仮に(貸し付けとの一貫性といった)本議案が可決された場合、株主やお客様などの多くのステークホルダーに悪影響が及ぶ可能性があることを懸念する」と反対意見を述べている。

賛成率の低い投融資の禁止提案

海外では、化石燃料への投融資の禁止や規制を求める株主提案への賛成率は低い水準にとどまっている。資産運用会社の大手ブラックロックが5月、「(削減を義務付けるような)規範的な提案は支持しない」とする報告書を公表したことも大きな影響を及ぼしているとみられている。 

日本企業はここ1~2年の間、新たな石炭火力発電所への投融資の中止や残高の削減、2050年カーボンニュートラルといった、今までになく踏み込んだ内容の経営方針を策定するようになった。政府による2020年のカーボンニュートラル宣言によるところが大きいが、株主提案の圧力がより踏み込んだ対応を促したことは間違いない。

環境NGOとして日本で初めて株主提案をした気候ネットワークの元メンバーである平田仁子氏(現クライメート・インテグレート代表理事)は「気候変動対策を後押しするツールとして、株主提案は日本でも定着した」と振り返る。

2022年度に入ってからも、三菱UFJが石油・天然ガスセクターへの投融資における二酸化炭素(CO2)排出削減目標を設定するなど、化石燃料ファイナンスを見直す動きは進んでいる。その背後では、環境NGOや機関投資家と企業との間でエンゲージメントと称する対話や厳しいやりとりが続けられている。

反面、ウクライナ戦争によりエネルギー危機が深刻化するなど不透明感は増しており、「カーボンニュートラルに向かううえで考慮すべき変数が増えた」(三井住友FGの竹田達哉・サステナビリティ企画部部長)のも事実。株主提案への賛否は今まで以上に読みにくくなっている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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