「自宅で保育する人にも手当」出す国のホンネ 賛否両論あるが…フィンランドの凄い政策

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年々、在宅保育の割合は減少し、女性の就業率は上がっているが、こういった制度が女性のキャリアの妨げになっているのではないか、という議論は常にある。在宅保育手当撤廃に関する提言は、国内外から聞こえてくる。この手当の利用者はまだまだ母親であることが多い。

フィンランドの子ども家族を支える制度は、幼児の親に柔軟で幅広い選択肢を与えている一方で、現実には母親が自宅で保育をする方に向かわせているのではないかという批判は、ある面から見れば事実だ。

そこで、ここ最近は自治体の保育手当は撤廃、もしくは支給期間を短縮する傾向にある。例えばトゥルク市では既に撤廃されているし、ヘルシンキ市は1歳まで、その隣のヴァンター市も1.5歳までとなっている。

社会も企業も2、3年の休職に寛容

それでも、在宅保育制度の満足度は高い。しかもフィンランド統計局の調査によると、子どもが3歳以上になると女性の就業率が80%を超え、小学校に通う年齢になれば、89.4%(2019年)にまで上がることから、利用者は元の職場に復帰しやすく、社会も企業も2、3年の休職に対して寛容なことがうかがえる。

実際、私の友人は育休と夫の海外赴任への同行で合計6年間休職していたが、その間に会社が合併し、元いた部署がなくなってしまった。復職時にはどこかの部署に仕事復帰することもできたのだが、彼女は思いきって社内公募されていたポジションに応募して見事選ばれた。元の仕事よりも昇進した形で復帰したわけだ。

同じように他の友人も、3人目の育児休暇を終えて、他社の部長職に応募して仕事復帰と転職、より責任のある仕事へのステップアップを同時に叶えていた。

産休・育休で欠員が出た場合、雇用主は代わりの人材を雇い、周りにしわ寄せがいかないようにするのが通常だ。しかもそれが半年や1年ではなく2〜3年となれば、経験の浅い若者にとっては経験や実力をつけ、能力をアピールする好機になるし、企業にとっても新たな人材発掘のいい期間となり、うまくいけば正社員として採用する道も拓ける。

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