お金は代替可能、なくても人は生きていける理由 だがまだ信用のない人は「お金でも持っておく」

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山崎:お金の厄介さは、「感情」が複雑に絡みがちなこと

お金に関する意思決定は、最適な状態からいくら損をしているかで数値的に評価することができる。たとえば、ダメな運用商品に投資したらいくら損だったのかが、結果論ではなく、意思決定時点のレベルで計算できる。

つまり、「バカの値段」が数値でわかるのがお金の世界なのだ。

お金は合理的に扱うべきだ。しかし、そうは言われても難しい。その理由は、お金には「感情」が複雑に絡むからだ。

ひとつには、お金がないと「生きていけない」かもしれないという恐怖がある。いわゆる「食えない」という状態だ。そうなりたくないという恐怖がお金の不安に直結する。

もうひとつ、お金にはプライドの問題がある。これも厄介だ。

お金はなんでも数値に換算して評価する。たとえば、年収の高い人が低い人に対して優越感を持つようなことが起こる。経済論理的には、より高い報酬を得るのは、世間に評価される、より大きな貢献をしたからだと考えることができる。すると、より大きな収入を得ている人は、社会にとってより価値の高い人なのだという連想が生じる。

そして、お金は数値なので、他人と比べやすい。年収1000万円の夫は、年収500万円の夫よりも価値の高い人間なのだというような意識が妻どうしの間で生じたりする。嫉妬や競争意識が、手段にすぎないお金を目的化する。そして、お金を目的化すると、人生は幸せに送れない。

山崎:非合理的な選択をしないために、「サンクコスト(埋没費用)」は見切る

人がお金を合理的に扱いづらい理由の1つに「サンクコスト(埋没費用)」がある。

たとえば、1000円で買った株が800円に下がってしまったとする。多くの人は「800円に下がってしまった株価を1000円にしたい」と思うはずだ。しかし、この「下がってしまった200円」は、「今後のため」の意思決定にあっては無視すべき要素だ。200円の損は、すでに起きてしまったことであり、いまから意図的に変えることはできない。

このように、すでに発生してしまった損失をいまの時点では取り返せないコストとして認識したものが「サンクコスト」だ。

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