お金は代替可能、なくても人は生きていける理由 だがまだ信用のない人は「お金でも持っておく」
この場合は、自分の買値から見た損得とは無関係に、「この株は800円のもの」だとして、これからどうするかを判断するのが正しい。
たとえば、1株が1000円から800円に下がったタイミングで、まとまったお金が必要になったとしよう。ここで「1000円で買った株を800円で売りたくない」と思い、消費者金融などから借金をするのはまったく非合理的な選択だ。ここではサンクコストにこだわらずに、必要な金額を部分的に売却や解約すべきなのだ。
サンクコストは、人間の心にとって厄介な存在だ。ノーベル経済学賞を受賞した学者の研究の対象にもなっているくらいのものなのだ。
だが、お金の運用は勝ち負けの世界ではないし、こだわりは持たないほうがいい。起きてしまった損は意識的に棚上げして忘れることにして、意思決定の時点から改めて先を見ながら損得を計算することをつねに意識しよう。ぜひ「習慣」にするといい。
意思決定全般に言えることだが、人生ではこれから変えられることについてのみ努力する価値がある。
サンクコストと並んで、人間の意思決定を歪めるのが「機会費用」だ。AとBの二択の選択肢がある場合、Aを選ぶと、Bを選ばないことになる。機会費用とは、もしBを選んでいた場合に得られていた利益を指す。
例を出そう。ある大学生が家庭教師のアルバイトで、1回5000円稼いでいたとする。ある日、アイドルのコンサートに誘われ、迷ったあげくアルバイトを休むことにした。コンサートのチケット代は4000円だった。
この大学生がコンサートに行くために負担した「実質的」な費用はいくらなのか。
答えは、チケット代の4000円だけではない。アルバイトで稼げるはずだった5000円も加える必要があり、合計9000円がコンサートの鑑賞費用だ。
もし、この大学生が「チケット代は4000円だし、せっかくの機会だからコンサートに行くか」とだけ判断していたら機会費用を考慮できていない。ここでは「9000円分の価値があるかどうか」が正しい判断基準だ。それでもコンサートに行きたいなら行くといいし、9000円分の価値はないと思えばアルバイトに行くのが合理的だ。
サンクコストと機会費用は忘れられやすい。お金の問題に限らず、人生のさまざまな意思決定にあって、これらの存在を意識すると「不必要な損」が減る。ぜひ覚えて使いこなせるようになってほしい。
就職、転職、結婚、離婚など、人生の重要事を考える際にも大事な考え方だ。
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