「ユニクロ一辺倒」男がスーツに目覚めたワケ 好印象を与えるのに最も手っ取り早い方法

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そんなぼくにとって、20代半ばに出会ったGAPや、30代で出会ったユニクロは福音だった。これこそぼくのためにある服だと思った。いずれも定番であるため、着ていても目立たない。それでいて質がよく、しかも値段が安い。特にユニクロが流行するようになってからは、ぼくはそれしか着なくなった。

余談だが、「ファイナルファンタジーXI」というオンラインゲームを遊んでいたとき、「ユニクロ装備」というジャーゴン(特殊用語)がゲーム内で流通していた。「ユニクロ装備」とは、「安価で買えるがそれなりの性質を持っている」という意味である。

オンラインゲームでは、装備が悪いとプレーの質が落ちるため、誰かと一緒に遊ぶときは、それに気を遣う必要がある。そこで変な装備をしていると、白い目で見られるのである。

「ユニクロ一辺倒」からの転機

そのため、ある程度の装備をする必要があるのだが、そこで他人から「まあこれだったらいいか」と最低限認めてもらえる装備のことを「ユニクロ装備」といっていたのだ。

ここで「ユニクロ」というのは、「手に入りやすい」という意味と同時に、「性能がいい」ということも意味していた。そんなジャーゴンに使われるほど、ユニクロは、手に入れやすくはあっても、けっして恥ずかしい服ではなかったのだ。

そうして30代の後半まで、ぼくはある種の自信を持って、ユニクロ一辺倒でやってきた。ところがそこで、転機が訪れる。職務の変更に伴って、仕事場でスーツを着なければならなくなったのだ。

ぼくは最初、これに抵抗を覚えた。それは、クリエイターとしてのみみっちいプライドからだ。スーツというのは、日本においては会社員の記号のようなところがあるので、クリエイターたる自分には相応しくないと思ったのだ。

しかしながら、職務には逆らうこともできず、渋々スーツを着始めた。すると、スーツというのはある種の制服のようなところがあるので、それを着ているとちっとも目立たなかった。そのため、もともと服で目立つことが嫌いだったぼくは、これがいっぺんで気に入った。そうして、今までスーツを着てこなかった自分の不明というものを、大いに恥じたのである。

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