日本は公務員減らしすぎ?都庁改革で見た超本質 日本の行政はまるでログインできないAmazon

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新浪剛史(にいなみ・たけし)/サントリーホールディングス代表取締役社長/新経済連盟幹事 1959年神奈川県生まれ。ハーバード大学経営大学院を修了。ローソン代表取締役社長CEOを経て現職。2014年から日本の経済財政のコントロールタワーである経済財政諮問会議の民間議員。国際商業会議所(ICC)Executive Board、世界経済フォーラムInternational Business Council、米国The Business Councilのメンバーとして、グローバルに活躍

新浪剛史(以下、新浪):DXができるかどうかは年齢や能力ではない。それを可能にする仕組みや環境をつくれるかどうかですよね。当社でも、いわゆるデジタルネイティブ世代よりもはるかに年齢の高い人たちが研修を真面目に受けて、着実に対応力を磨いています。

環境的には、商売をする相手であるお客様がデジタルを取り入れていけば、私たちも対応せざるをえませんし、その流れは加速していくはずです。今はデジタルと非デジタルが混在する過渡期だから、踏ん張りどころです。

今後、デジタル化が進んだと仮定して、その先にどういう社会をつくっていくかというビジョンを明確に描くことも重要ですね。それは、人々の働き方にも直結します。オンライン化によって業務の合理化・効率化が進めば、当然、「今までと同じ数の人員はいらなくなる」という状況も出てくるでしょう。経営者としては非常に悩ましい問題ではあります。

公務員は少なすぎる!?

宮坂:行政に来て感じるのは「何をどう〝小さく〞するのか」という問いの重要性です。

「小さな政府」というと、人員や予算を縮小するイメージが先行しがちですが、コロナ対策や災害対策に取り組む中で、僕は「ちょっと小さくしすぎたのではないか」という感覚をもちました。

行政の仕事は上下水道や交通などエッセンシャルワークが多くを占め、非常時にもギリギリの状態で対応しています。さらにここ数年はオリンピックの仕事もあったわけです。

ゆとりがない状態では新しい改革も難しくなりますし、人口1000人あたりの公務員の数は、諸外国と比べて日本は非常に少ないといわれています。行政においては、何をどのくらい「小さく」するのかという議論はもう少し重ねてもいいのではないでしょうか。

新浪:DXによって在宅勤務も可能になり、生産性が向上すると、「人員の余剰」が発生するかもしれませんが、デジタル化が進んだことで発展した副業や兼業のマッチングサービスを大いに使って、個人の多彩な能力がさまざまな形で活かせる可能性を広げていければいい。

人が働くために、体ごと移動しなければいけない時代はもう過去の話で、今は、「脳だけ移動して働く」ことが可能になりました。「1人雇う余力はないが、〝10分の1〞人なら雇える」という中小企業も少なくないはずです。DXの恩恵を大いに活かして、よりエフェクティブな組織を民間だけでなく行政でもつくっていく。ここに日本の働き方の活路がある気がします。

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