テクノロジー関係者でティム・オライリーの名前を知らない人物はいないだろう。
オライリーは、1977年に自分の名前を冠した出版社を創設した。サンフランシスコから北へ2時間ほども車を走らせた、のんびりした田舎町に、だ。
そのオライリー&アソシエーツ(後にオライリー・メディアに改称)が出版したのは、コンピュータ関連の解説本。コンピュータ・ハードウェアの関係者たちに向けたものだった。
だが、考えてもみてほしい。1970年代末といえば、インターネットはもちろんのこと、パーソナル・コンピュータが人々に知られていなかった時代。彼は、そんな時にコンピュータに特化した出版社を作ってしまったのだ。
ウェブ界の新しい潮流を見つけ出す嗅覚
だが、オライリーの先見の明は年月が経つに連れて次々と明らかになっていく。
たとえば、1992年に出版したインターネットの解説本『ホール・インターネット・ユーザーガイド&カタログ』は、100万部を超えるベストセラーになっただけでなく、いち早くインターネットとは何かというコンセプトを人々と共有した。
そのインターネットにウェブサイトのポータルを作り、そこにバナー広告を表示させるしくみも、オライリー&アソシエーツが最初に考案したものだ。これが、インターネット上で広く利用されたことはいうまでもない。
1990年代後半からはテクノロジー関連の会議も開催し始めたが、そのテーマの設定に関係者は舌をまいた。「オープンソース」「ウェブ2.0」「ロケーション技術」「電子書籍」「ビッグデータ」など。その時々でテクノロジーが可能にする次世代の風景を指差し、そこに人々を集めて知恵を交換し合うという場を設けたわけだ。
ロケーション技術や電子書籍のようにいったん定着してしまえば、その会議はなくなり、新たなテーマに刷新される。現在はIoT(インターネット・オブ・シングズ)やビットコイン技術といった新しいテーマが加わっている。
会議は、たいてい壇上でプレゼンテーションやスピーチをするセッションで構成される。それ以外にもワークショップのようなものもあり、新しい技術の学習の場にもなっている。何よりも、同じテーマに関心を持つテクノロジー関係者が集まり交流するところに、こうした会議の大きな意味がある。ここで行われた情報交換から、さらに新しいテクノロジーやビジネスが生まれているからだ。
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