ホンダとタカタの業績を分析する 深刻なエアバッグ問題を乗り越えられるか

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冒頭でも触れましたが、リコール台数は全世界で1000万台を超える規模まで拡大しています。仮に、リコールにかかる費用が1台あたり1万円だとしても、1000万台で1000億円です。しかし、整備費用や交換する部品などの費用をすべて含めると、1台1万円で済むかはわかりませんから、それ以上の特別損失を計上しなければならない可能性があるのです。

中長期的な安全性を示す自己資本比率(純資産÷資産)は、31.2%。現時点では問題のない水準ですが、今後のエアバッグ問題の成り行きによっては、安全性が大きく損なわれる恐れがあります。

ホンダがタカタを救う可能性も

1000万台規模にまでリコール台数が膨らみ、その費用をすべてタカタが負担することになると、タカタの安全性に大きな影響が出かねません。後で詳しく見ますが、タカタの総資産は3000億円、純資産は1400億円程度ですから、軽微な影響では済みません。そこで、自動車大手のホンダがタカタを救うのではないかとの憶測が出ています。

なぜ、ホンダなのでしょうか。タカタのエアバッグ事業には、ホンダが深く関わっていたからです。かつて、タカタは織物会社でした。それが1960年にシートベルトの製造を開始し、自動車部品事業に進出していったのです。

その後、ホンダの依頼によって、1987年からエアバッグの製造を始めます。日本で初めてエアバッグが搭載されたのも、ホンダのレジェンドでした。今も、ホンダの自動車の約半数にタカタ製のエアバッグが搭載されているとのことです。

このように、タカタのエアバッグ事業のきっかけを作ったのがホンダだったという経緯があり、またタカタ製エアバッグを多く使っているということもあり、事態が深刻化すれば、ホンダが救いの手をさしのべるのではないかとも考えられるのです。

そこで、決算短信でホンダの貸借対照表(9~10ページ)を見ますと、資産合計は16兆4725億円。純資産だけでも6兆5167億円あります。損益計算書(11ページ)から売上高を見ますと、上期だけで6兆0030億円ですから、通期では12兆円規模になります。営業利益も、上期で3624億円計上されています。

一方、タカタの資産合計は3127億円。売上高は上期で3020億円ですから、通期では6000億円規模になります。

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