トヨタが異例の戦略、FCV特許開放の必然 普及加速のためにはこれしかない?

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2014年12月から発売したトヨタのFCV。国に加え地方自治体の補助金を使えば400万円台で購入できる

「水素社会を作り上げるのは、ひとつの自動車会社ではできない。オールプラネットというか、みなさんの協力を得ながら水素社会を実現するための決断だ」。豊田章男社長は異例の決定の背景をこう説明する。

トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)の普及を後押しするために、単独で保有する燃料電池関連の全特許5680件を無償で提供する。水素と酸素を化学反応させて発電し、モーターで動くFCVは、走行時に温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないため、「究極のエコカー」とも称される。

昨年12月、トヨタは世界に先駆けて一般向けに「MIRAI(ミライ)」を発売し、FCVを次世代環境車の本命として力を入れている。特許を無償で開放する「オープン戦略」はIT業界でそれほど珍しくないが、自動車業界ではあまり例がない。昨年6月に米国の電気自動車(EV)ベンチャー、テスラ・モーターズが特許を開放している程度だ。

 圧倒的リードでも現実は甘くない

従来、トヨタは保有する特許の使用希望者には原則許可する方針を掲げてきたが、あくまで有償だった。では今回、FCVで特許をなぜ無料開放するのか。現在、トヨタのリードは圧倒的だ。5年ほど前には1台1億円ともいわれていたFCVだが、ミライでは723万円と大幅な引き下げに成功した。ホンダが2015年度中、日産が2017年の発売を計画。欧米の大手メーカーも開発を進めるが、トヨタは一足先に市販を開始した。

水素を幅広く発電に使う水素社会の実現を日本政府も強力にバックアップ。FCVには政府補助が202万円用意されている。昨年11月時点での先行受注は200台。その後の数字は公開されていないが、初年度の国内販売予定の400台を大きく上回っており、すでに1年待ちとも2年待ちともいわれている。こうして見ると、一般にどこまで受け入れられるのかが未知数な中でスタートは上々。先行するトヨタのFCVは前途は明るそうだが、現実はそう甘くない。

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