岸田首相の「資産所得倍増計画」は意外に使える? 「老後2000万円問題」も解決できるかもしれない

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ちなみに、年間84万円を20年間積み立てると投資元本の累積は1680万円だ。運用益を合わせると、かなり控え目に見ても20年後の資産残高は2000万円を超える可能性が大きい。

金融庁には忘れたい思い出かもしれないが、2019年に世間を騒がせた「老後2000万円問題」に対する、罪滅ぼしとしてもちょうどいいのではなだろうか。「とらぬ狸の皮算用」的な数字を出すのは控えたほうがいいのだが、ちょっとだけ計算してみると、運用利回りを4%としても、20年後の資産額は2500万円を超える。

投資を優遇する政策が検討される場合、常に「金持ち優遇だ」という批判が出てきて、これが特に税制論議の場では税制上のメリットを「値切る」理由に使われがちだ。だが、つみたてNISAの「倍増」の場合、主なターゲットは「資産形成層」(資産を「これから」形成する人々)なので、この批判に該当しないのはいい。

第3に、つみたてNISAは、成人であればどんな年齢層も利用できる点で、国民に対するメリットの与え方がフェアな点が好ましい。

たとえば、政府は企業に対して70歳までの雇用継続努力を要請するなど、今後高齢者がより長く働くようになることが予想されるが、つみたてNISAは高齢者が使ってもいい。つみたてNISAは、いつでも部分的に解約できるので、iDeCoよりも使いやすい面がある。iDeCoや新NISA(2024年から導入される予定)よりも、仕組みがシンプルな点もいい。

投資人口も増え、金融業界にも長期でプラス効果

第4に、つみたてNISAの拡充がもたらす「マネーリテラシー普及効果」が好ましい。つみたてNISAは、投資で重要な「長期・分散・低コスト」を実際に体験できる制度だ。また、つみたてNISAでは、金融庁が「長期的な資産形成に不適切な商品」を除外して対象商品を絞り込んでいるので、利用者が手数料の高い不適切な商品に誘導されるリスクが小さい。

また、つみたてNISAが普及することで、長期的には国民の運用商品に対する選択眼が改善することが期待される。はっきり言うと、つみたてNISAで除外されるような「長期的に不適切な商品」は、1年、2年といった「短期の運用にも不適切」なのだ。金融業界には少し不都合な話なのだが、読者にはこの点をよく覚えておいてほしい。

つみたてNISAを「倍増」した場合の金融業界への影響はどうなるか。当初は、手数料が高いダメな商品に回るはずだった資金が手数料の低いつみたてNISA適合商品にシフトする減収効果と、「増枠」によって資金がより多く集まる増収効果とが拮抗して打ち消し合うことが予想されるが、長期的には、投資に関心を持ち、実際の投資体験を持つ人口が増えるので、結局はプラス効果が大きいのではないだろうか。

なお、つみたてNISAに関して、筆者は以下の2つの改善要望を持っている。1つ目は商品選定の基準の見直しだ。ここでは「広げてもいい基準」と「狭めてもいい基準」があり、例えば高手数料の商品は今後ももちろん除外すべきだ。2つ目は、20年間商品の乗り換えが利かない点をいくらか緩和してもいいのではないかという点。例えば5年に1度くらいスイッチングができると、運用上のうえでも、商品間の競争を促進するうえでも好ましいからだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページさて競馬コーナー。伝統のエプソムカップの勝者は?
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