ロシア軍から住民1300人救出してきた牧師の一日 防弾チョッキを着て住民を救出する緊張の瞬間

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ロシア軍の砲撃を受けて破壊した食肉加工工場と工場長 4月20日  ザポリージャ (写真:筆者撮影)

〈ザポリージャの中心部もロシアが占領した。避難しても無駄だ〉と、ロシア系住民がプロパガンダを流すこともあるというウクライナ南東部。物資のみならず、情報の遮断も深刻な問題になっている。

この日の午後、避難施設の警官たちは手持ち無沙汰の状態に陥っていた。避難してくる人がいなかったためだ。バスの運転手はこう話す。

「今日、ここから15キロ南のところが通行止めになった。急に戦闘が激しくなったから、民間車両の通行はダメだって軍が言うんだ」

ザポリージャ中心部から南に伸びる幹線道路は住民避難のための「人道回廊」に指定され、戦闘が停止されるはずだった。しかし、ロシア軍はミサイルの発射を続け、救助活動が困難になっていた。

その後、戦闘地域から脱出してきた住民の中には、ロシア軍の銃弾をあび、車のガラスが破損している人もいた。陸の孤島と化した激戦地、マリウポリの住民だった。

立ち上がったマリウポリの牧師

アゾフ海から約1キロ、マリウポリに緑に囲まれた教会がある。1992年に設立されたグッド・チェンジ教会。地元出身の牧師、ゲナディー・モクヘンコ(54)が作った。

ストリートチルドレンの支援や里親制度の普及に尽力してきた人物だ。自身の子3人の他に、これまで37人の養子を育てたという。今回の戦争で27番目の幼女を喪った。教会も攻撃を受け、自宅はロシア兵に乗っ取られた。

マリウポリの牧師ゲナディー(中央)が作った支援団体のミーティング 4月26日(写真:筆者撮影)
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