――入江さんはビジョンがはっきりしていて。現場でもやりたいことが明確だったという声がありました。
ただ、やはり知らないことだらけでした。この作品を監督させてもらえると決まってからは、ダンボールを家に置いて、そこに資料になりそうなものをどんどん買い集めて、ひたすら勉強しましたね。それからコミュニケーションも学びました。海外ロケ、海外のキャストと撮影をすることになっていたので。たとえばさまつなことでいうと、役者がいい芝居をしたときにどうやって褒めるのかといったことも勉強していました。
褒め方も工夫して、海外スタッフとの関係を構築
――ちなみにどうやって褒めるのでしょうか。
「グッド」だけだとありきたりすぎるし、軽すぎる。「グレート」とか「ファンタスティック」「マーヴェリック」といったことも使い分けないといけない。もちろん通訳さんもいるんですが、直接言ったほうがダイレクトに言葉が響いて芝居がよくなる。向こうのスタッフだって、僕が誰なのか知らない。彼らにも気さくに声をかけないといけない。そこで自動車メーカーや衣服メーカーなど、海外に進出する企業の社長について書かれたビジネス書もかなり読みました。
意外にそういったものが映画作りに役に立ったりするんです。たとえば今回だと、D機関の結城中佐は、組織の運営者であって創立者でもあるわけです。リーダーが集団をどうやってマネジメントするかということは、たとえば昔に読んだ、ユニクロの柳井正さんの本が意外と役に立ったりする。自分の器をどんどん広げていく過程って、すごくわくわくします。
――多国籍の人たちをまとめるという意味で、具体的に何がいちばん参考になりましたか。
映画監督のジョン・バダムが書いた『監督のリーダーシップ術』(フィルムアート社)という本はすごく勉強になりましたね。アメリカという国で監督をするということは、自分の意図をきちんと伝えないとならない。向こうはいろいろな人種が集まっていますし、契約社会でシビアに行なわれていきますから。向こうはよかったらよかった、ダメだったらもう少しこうしてくれということを的確に言って、監督が何を求めているのか、ビジョンを明確にしないと通用しないと書かれていた。その本はすごく勉強になりましたね。
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