ウディ・アレンがアマゾンに番組を作るワケ 映画一筋の人を口説いたアマゾンの力
映画を撮り続けて40年以上。ウディ・アレン(79)監督がついにテレビに降臨する。しかもストリーミング配信の世界だ。
アマゾンは先ごろ、アレンにとって初めてとなるテレビシリーズの脚本・監督の契約を結んだと発表した。30分番組を1シーズン分で、タイトルや内容は未定。来年中に公開される。
独自コンテンツをアマゾンの"ウリ"に
「どうしてやることになったのか、自分でもわからない」と、アレンは声明で述べている。「いったいどうなっているのか。どこから始めればいいのかもわからない」。
アレンが手掛けるシリーズは、アマゾンのほかのオリジナルコンテンツと同じように、動画配信サービス「プライム・インスタント・ビデオ」で独占的に配信される(米、英、独で配信予定)。同サービスは年会費99ドルのプライム会員限定で、エンターテイメントをアマゾンの巨大な小売網に組み入れる作戦のひとつだ。
アレンに白羽の矢を立てたことは、アマゾンがクリエイティブの世界に狙いを定めたという宣言でもある。つい先日、アマゾンはゴールデングローブ賞の授賞式で注目を集めた。同社が制作したドラマ──トランスジェンダーの父親と家族のブラックコメディ「トランスペアレント」──が、ストリーミング配信のシリーズ作として史上初めて、テレビ部門の作品賞に輝いたのだ。
テレビ局とのクリエーター争奪戦が過熱
アレンの起用は、デジタル企業と従来のテレビネットワークの熾烈な争いに拍車をかける。アマゾン、ネットフリックス、Hulu(フールー)は、ストリーミング配信のオリジナルコンテンツの制作に資源をつぎ込んでいる。有料ケーブルチャンネル大手のHBOも参戦し、年内に独自のストリーミング配信サービスを開始すると発表した。
アマゾン・スタジオのロイ・プライス副社長は声明で、アレンを米映画史に残る傑作を手がけてきた伝説の映画監督と称賛した。メールで取材に答えたプライスによると、ニューヨークでアレンと数回会って契約が決まったという。
「ウディ・アレンの登場人物とコメディは、テレビでも美しく表現できると以前から思っていた。特に近年のテレビはシリーズ作品が主流で、微妙な含みのあるキャラクターも受け入れられやすくなった」。
アレンは声明で、「ロイ・プライスは後悔するだろう」とうそぶいた。