トム・クルーズが「銀幕イケメンスター」を貫く訳 「トップガン マーヴェリック」で観客を魅了
『トップガン マーヴェリック』が全世界で爆発的にヒットしている。日本では公開1週間もしないうちに20億円を達成し、北米でもすでに興収2億ドルを突破した。
単に数字だけを見るなら、とくに目新しいことではない。これくらいのヒットはほかにもある。今作のヒットが注目されるのは、マーベルのスーパーヒーロー映画や『スター・ウォーズ』ではなく、トム・クルーズという往年のスターが、いかにもスターらしさを発揮して、全世界規模で人々を楽しませているからなのだ。
『トップガン』でトム・クルーズが大スターになった1980年代から20数年の間、ハリウッド映画はスターが引っ張るものだった。観客は「このスターが出ているから」という理由で映画を選び、それらのスターの出演料はどんどん上がっていった。
スターが目玉ではなくなっていった
トム・クルーズ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ハリソン・フォード、ブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオ、ジム・キャリーなど、ひと握りの超売れっ子は「2000万ドルクラブ」と呼ばれ、さらにバックエンドという、興行成績に応じて歩合が支払われるボーナスまでもらえる、おいしい契約を結んだものだ(女優の場合は、ジュリア・ロバーツやキャメロン・ディアスなど超売れっ子でも、ここまでのギャラはもらえなかった。よく言われている、ハリウッドの男女差別である)。
しかし、時代が変わっていくうち、観客は、誰が出ているかではなく、コンセプトで映画を選ぶようになっていった。マーベルの映画はその典型。マーベル映画に出る俳優は、マーベル映画に出たから有名になるのであり、マーベルは自分たちの映画に出てもらうために大物スターを巨額のギャラで釣ろうとはしない。
映画とテレビの境目もどんどん薄れてきた。日本と違い、かつてアメリカでは、映画スターは別格の存在だった。映画スターはテレビにも、コマーシャルにも出ないものだった。ハリウッドスターが日本のコマーシャルに出る例は昔からあったが、それはアメリカ人の目に触れない日本だから、楽な金稼ぎとして出演したにすぎない。最近ではその辺りがかなり緩んできて、とくにスーパーボウルで放映されるコマーシャルには、ジェイソン・モモアやスカーレット・ヨハンソンなども出るようになっている。
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