再び「中絶禁止」論争でアメリカが大紛糾する理由 11月に行われる中間選挙にどう影響する?

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そのほかにも女優のミラ・ジョヴォヴィッチ、シンガーのヴァネッサ・ウィリアムズ、ヒップホップ・アーティストのニッキー・ミナージュ、リル・キム、オジー・オズボーンの妻のシャロン・オズボーンなども自ら中絶の経験を語っているのだ。

共和党が優位な州では人工中絶手術を受けられない

女性の性と出産に関する権利に関する啓蒙活動を行っているプランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)によると、法案が改められ、中絶への権利が禁止されると、この夏までに全50州のうちの半数以上の26の州が中絶を禁止する方向に動く可能性があり、3600万人の女性に影響を与えることになるという。

今年に入ってからは、42州の州議会議員によって500以上の中絶規制が導入された。フロリダ、オクラホマ、ケンタッキー、アリゾナ、アイダホ、ワイオミングの6つの州は、今年になって中絶禁止令を制定した。

署名されたばかりのオクラホマ州の中絶禁止令は、昨年9月に施行されたテキサス州の6週間以降の中絶禁止令を参考にしたものである。アメリカでは人口の約3分の2がキリスト教徒で、キリスト教の右派が多い南部を中心に中絶に反対する運動が広がっていった。また、厳しい戒律を持つカトリックも中絶に反対するのは宗教上の理由からである。

キリスト教右派はトランプ前大統領の強力な支持基盤で、2016年の大統領選では右派の約8割がトランプに投票している。スキャンダルや生活態度から勝利が危ぶまれていたトランプ氏は当時、全人口の約4分の1を占める右派の票が欲しかったため、妊娠中絶禁止派に宗主替えして勝利したと言われている。そのため共和党が優位な州では、多数の女性たちが人工中絶手術を受けられない状況になってしまったのだ。

160名の若手アーティスト、インフルエンサーが 「#BansOffOurBodies(私たちの体を規制するな)」キャンペーンを支援するために 署名したニューヨークタイムズの全面広告の本紙のショット(写真:筆者撮影)

そこで、若手アーティストやセレブが立ち上がり、全米家族計画連盟の「#BansOffOurBodies(私たちの体を規制するな)」キャンペーンを支援するため、5月13日のニューヨークタイムズの全ページ広告に160名の署名が掲載された。

名前が掲載されているセレブは、アリアナ・グランデ、マイリー・サイラス、ビリー・アイリッシュ、ケンダル・ジェンナー、セレーナ・ゴメス、オリビア・ロドリゴ、カミラ・カベロ、デミ・ロヴァートなど、若者に影響力を持つアーティスト、インフルエンサーが多い。

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