「シン・ウルトラマン」=おっさんホイホイの理由 原作忠実性、現代的テーマ、コント性の黄金比率

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まず、この映画が持つ「おっさんホイホイ」性として指摘したいのは、テレビ版原作(1966~1967年)への忠実性である。

観る前に危惧したのは、(ありがちな)近未来的サイバー空間に映像が押し込められてしまうことだ。再放送で何度も見た、あの映像世界と離れてしまうこと。

しかし、それは杞憂に終わった。最新の技術を駆使しながらも、映像世界が、原作の延長線に置かれていた。

原作ではミニチュアセットとスーツで表現していたウルトラマンと怪獣の戦いを、CG(コンピューター・グラフィックス)で映像化したそうだが、絵面(えづら)にはアナログな昭和の匂いがぷんぷんする。

また、ウルトラマンのキャラクターデザインを手掛けた成田亨の意志を継いだという、ウルトラマンの姿が、とにかく惚れ惚れするほど美しい。

映画の公式サイトで、庵野秀明はこう書いている――「成田氏が望まなかった、眼の部分に覗き穴を入れない。成田氏が望まなかった、スーツ着脱用ファスナーに伴う背鰭(筆者註:せびれ)を付けない。そして、成田氏が望まなかった、カラータイマーを付けない」。

さらには、オリジナルでウルトラマンのスーツに入った古谷敏(78歳)を再起用して、モーションキャプチャーで撮影したのだというから徹底している。

ちなみに米津玄師による主題歌は『M八七』。我々がよく知るのは「M78星雲」だが、最初の企画の段階では「M87星雲」だったことから来ているのだという。

まずはこれら、原作への忠実性、原作愛によって、この映画は、中高年男性の基礎票を吸引する。

現代性を帯びたテーマに中高年が引き寄せられる

加えての「おっさんホイホイ」性として、『シン・ゴジラ』もそうだったのだが、単なる懐古物でなく、テーマが現代性を帯びていることが指摘できる。このあたりも、未だに新聞を紙で読み、ニュース番組を眺め、米倉涼子主演の『新聞記者』(Netflix)に惹かれるような中高年男性の好むところだと感じた。

言い換えれば、テレビ版原作のエピソードから、東日本大震災以降、コロナ禍の日本における現代性を持つテーマと怪獣を選択している。

前半に登場する2つの禍威獣(かいじゅう。本映画では「怪獣」ではなくこう表す)、電力をエネルギーとするがゆえに電力設備を破壊するネロンガと、同様に地下核廃棄物貯蔵施設を狙うガボラを、私は、福島第一原発事故と関連付けて観た。

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