日本人は年功序列賃金の弊害をよくわかってない 単に歳を重ねただけで生産性が上がるのだろうか

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図表1でもう1つ重要な点は、日本の場合には、60歳を過ぎると、賃金が急激に減少することだ。

上で述べたように、欧米では、このような現象は見られない。

日本の雇用は「終身雇用的」と言われるのだが、実は60歳以降は、賃金の急減という深刻な問題を抱えているのだ。

「人生100年時代」に適応した体制にはなっていない。

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現在、公的年金の支給開始年齢は65歳に向けて引き上げられており、2025年に完了する。このため、企業は、65歳までの雇用維持を期待されている。

企業は、その要請に応えて雇用を維持することとしているが、賃金をカットしているのだ。

政府は、年金支給開始年齢を65歳からさらに引き上げることはないとしている。しかし、年金財政の実情を考えると、70歳にまで引き上げられる可能性は否定できない。

そうなった場合に、70歳までの高齢者の世帯の生活を、企業の負担で面倒を見るのかどうかが、重大な問題だ。

日本社会の基本的な仕組みを変えることが必要

以上で見たように、企業の報酬制度が現在のような形では、日本経済が変化に対応することは難しい。ましてや、世界をリードしていくことは、絶望的なほど難しいと考えざるを得ない。

現在の制度をどう変えていくかが、未来に向かっての重要な課題だ。これは、日本社会のもっとも基本的な仕組みを変えていくことを意味する。

「ジョブ型雇用」の導入などが始まっているが、その行方を注視したい。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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