日本の報酬体系の中で、退職金は重要な地位を占めている。
その額は、勤続年数と強く関連付けられている。
「 退職金・年金に関する実態調査結果 」(日本経済団体連合会 、東京経営者協会、2022 年3月)によれば、大学卒の退職金は、勤続年数が38年の場合には2243万円であるのに対して、10年の場合には289万円でしかない。
このように、勤続年数によって、非常に大きな違いがある。
このため、早期に退職して他の企業に移ると、得られる退職金額が大幅に減ってしまうという問題が発生する。
労働力の企業間移動が少なく、退職金が阻害
労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」によって勤続年数別雇用者割合(2020年)を見ると、日本では、短期間勤務者の比率が低く、長期間勤務者の比率が高い。アメリカは、ちょうどその逆になっている。
すなわち、勤続年数1年未満が、日本は8.5%、アメリカは22.2%であるのに対して、20年以上は、日本は21.7%であるのに対して、アメリカは10.8%となっている。
これは、日本では企業間の労働力移動が少ないことを示している。
このことは、産業の新陳代謝を遅らせ、生産性を低める要因になっている。
企業間の労働力移動が少ない理由として、日本では解雇規制が厳しいこともあるだろう。
それに加え、先に見たように、ある企業に一定年数在籍しないと十分な額の退職金を得られないことが、他の企業への移動に対して大きな障害になっていると考えられる。
変化が激しい世界では、労働力が他の企業に容易に移動できることが重要だ。
確定拠出年金など、ポータブル型の退職金制度も導入されつつはあるが、まだ限定的だ。
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