二兎追い二兎を得る「創造力」が抜群な人の思考法 トレードオフの課題解決は「創造」で溢れている

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たとえば、一流のコンサルタントは、顧客から持ち込まれた課題をそのまま受け止めない。本当の課題は顧客が気づいていないところにある、と考えているからだ。顧客から持ち込まれた課題を転換して、ほかに本当の課題があるはずだと仮説を立ててプロジェクトをスタートしているのだ。

本来やるべきは上位の課題を解くこと

では、この課題の転換は具体的にどう行えばいいのか。そのうちの1つの方法をここでは提示したい。

a. 当該課題を解かなくても、より上位の課題を解消したり、目的を達成できる方法があるのではないかと考える。

これは、皆が必死に考えている課題に対して、そもそもこの課題は考える必要はあるのか、解決しなくても本来の目的は達成できるのではないか、と考える方法だ。

基本的に、解くことができずに問題になっている課題には、より上位の課題が存在する。つまり、解けずに問題になっている課題は、より上位の課題を解くために設定されたものであったり、本来の目的を達成するための1つの要素にすぎないのだ。そして、本当にやるべきことは、上位の課題を解き、本来の目的を達成することである。

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こうした原則に立ち返り、目の前に解けない課題が現れたときには、直接この課題を解かなくても、上位の課題を解いたり、本来の目的を達成できないかと考えたりすることで、ブレイクスルーが生まれる可能性があるのだ。

例えば、イーロン・マスク氏が経営するスペースXの打ち上げ用ロケット「ファルコン9」のクラスターエンジンは、「正確で完璧なエンジンを作らないといけない」という常識的な課題に対して、達成したい目的が「宇宙に行くこと」であれば、この常識的な課題を解かなくても、本来の目的を達成する課題(「小型のエンジンを複数機積めばいいのではないか」)があるのではないかという視点から考案されたものだ。そして実際に、小型エンジンを9つ搭載したファルコン9で宇宙に行った。

では、ここまでの議論を踏まえて以下のお題に取り組んでみてほしい。

思考トレーニング②

・普段の仕事や生活での課題やニーズを書き出してください。
・上記aの方法を活用して、その課題やニーズの上位の課題やニーズを考えてください。
・その課題やニーズを解かなくても上位の課題やニーズを解決できる別の課題やニーズを考えてください。
・その転換した課題やニーズを解決する方法を考えてみてください。

創造的になるトレーニングとしてここまで2つの思考法をみてきた。普段は意識しない考え方をしつこく繰り返すことで、脳がその思考方法に慣れて自然と考えることができるようになり、誰でも創造的になれるはずだ。

永井 翔吾 VISITS Technologies エグゼクティブ・ディレクター

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ながい しょうご / Shogo Nagai

1986年生まれ、埼玉県出身。2012年大学院法務研究科を修了し、同年、司法試験と国家公務員総合職試験に合格。2013年経済産業省に入省。主に、知的財産政策や法律改正業務に携わる。その後、ボストン コンサルティング グループに入社し、大企業の新規事業立ち上げや営業戦略等のプロジェクトに従事。2016年、創業期の株式会社VISITS WORKS(現 VISITS Technologies株式会社)にジョインし、現在は、デザイン思考テスト事業の責任者。

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