本を読み「ものにする人」と身につかない人の大差 「独学」を三日坊主で終わらせないために必要な心得

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歴史の勉強で例えてみましょう。歴史を学ぶ意義は、単に年号や事実を記憶するものだと考えている人も多いかもしれませんが、私はそうではないと思います。人によって意見は分かれるでしょうが、私は歴史から未来へのアドバイスをもらうのが目的だと考えています。

もちろん、歴史の出来事をそのまま教訓に使えるわけではありません。

時代や地域の違いを超えた「普遍的な構造」を見いだす

そこでヒントになるのが、「普遍化」というキーワードです。

「普遍化」という視点を持って、17世紀のオランダで起きた、いわゆるチューリップ・バブル以来のバブル経済の歴史を勉強していけば、現在起きているバブル的な経済現象がどう推移していくのかの見当がつきますし、将来バブルが起きたときに対処の仕方や起こった原因などを理解できます。

このようにさまざまな歴史上の出来事の中から、時代や地域の違いを超えた「普遍的な構造」を見いだすことが重要です。

この普遍化の作業がなければ、歴史で学ぶことは過去の一事例に過ぎず、使いものにならないと思うのです。それは歴史に限らずあらゆる学問で言えると思います。

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表面的な歴史的事実は何もしなければ単なるデータに過ぎません。その歴史的なデータを自分なりに分析しながら、組み立て直したり、なぜこの事件が起きたのだろうと考えたりしながら、何か未来の自分たちに生かすメッセージを受け取ろうとして歴史を学んでこそ、意味があると思うのです。

だからこそ、歴史的な事実から、いつの時代にも通じる普遍的なストーリーを読み取るという「普遍化」の作業は重要なのです。

それによって、自分なりに理解してきたものが、もう一段階熟成されていくきっかけになるのではないかと思うのです。さらには、現在の自分が置かれている状況を、今よりも俯瞰して見られるようになるでしょう。それができれば、学問というものが、机上の空論に終わらず現在や未来に生きたものになるはずです。

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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