日本人がテロとの戦いに組み込まれる可能性 塩尻宏・元駐リビア大使に聞く(後編)

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わたしの体験から言えることは、日本人は世界の中では情緒的で、人が良く、優しい部類に入る人が多いと思います。しかし、欧米社会では外交辞令や社交辞令はあっても冷徹な利害関係で動いており、日本人的な義理人情の感覚はないと思われます。今回のパリでの事件をめぐる動きについても情緒的な視点から見ると理解し難いように思います。

日本がテロとの戦いに参加する可能性

――今回の事件後、フランスのオランド大統領は、原子力空母「シャルル・ドゴール」をシリア沖に派遣するなど、軍事的な示威行動に出ています。今回の事件をきっかけに「イスラーム国」などによるテロ行為を理由に、欧米対イスラームという軍事対立の構図が出来る恐れがあると思います。こうした中で、日米同盟と集団的自衛権行使の枠組みにより日本も参加を求められませんか。

今後の展開は予見できませんが、その可能性は十分にあります。日本は国際社会での地位を維持するために欧米と協調する政策を採用しています。それは必要なことでもありますが、敗戦国としての歴史を引きずる日本の外交政策は、協調レベル以上に米国の政策と意向に左右されていることは否定できない現実です。

すでに2009年から日本の自衛隊は、ソマリア沖海賊対策を理由にアフリカのジブチに根拠地を築き、護衛艦などを派遣しています。海上自衛隊の活動地域は、イエメンの南にあるアデン湾やソマリア沖です。ジブチの自衛隊根拠地は年々強化されています。今後も日米同盟関係はますます強まると思いますが、それに伴い、日本も国際的なテロの対象となる可能性が高まるのではないかと気になります。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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