アマゾン配達「勝ち組」ギグワーカーが語る本音 働き方は自由、ブラック社員よりはるかにいい
アマゾンフレックスは、2017年の「宅配クライシス」と呼ばれる、大手運送会社の送料抑制や値上げを経て、アマゾンが2019年から独自に始めた仕組み。ドライバーはアマゾンと直接契約して、アプリで働きたい時間帯の仕事を確保する。倉庫から荷物を持ち出し、AIで組まれたルートに従って配達する。「置き配」が基本になっていることも特徴的だ。
時間単価がいいことから、参入する人たちが増えている。佐々木さんのような慣れたドライバーにとっては、働きやすく、稼げる仕事であり、否定的な見方をされることには、違和感があるという。
過去にアマゾンフレックスの宅配ドライバーをやったことがある原田さん(30代男性、仮名)も、以前に中小の物流会社を業務過多でやめたことがあり、「やりたい人が自由にやればいいということは理解できる」と語る。
下請け業者とは違った問題がある
ただ、「自由であることのよさ」を感じている反面、それはアマゾンの「手のひらの上の自由」だとも感じている。ある日、突然アカウント停止に陥ってしまったからだ。
「急にアカウントを停止されて、異議申し立てをしたけれどもマニュアルどおりの返事しか来なくて、何もできませんでした。その前から、荷物が届いていない件数が多いという警告が出ていましたが、誤配などのミスはなかったと自覚しています。客から何らかのクレームがあったのかもしれませんが、こちらの言い分もまともに聞いてもらえず、納得がいかなかったですね」
プラットフォーマーの一方的な対応は、問題視されることが多い。建交労軽貨物ユニオンの高橋英晴代表は、「アマゾンフレックスの場合、下請け業者(いわゆるデリバリープロバイダーと呼ばれるアマゾンの委託業者のさらに下請け)でドライバーをやる場合に比べて自由はあるのかもしれないですが、アカウント停止や、トラブルがあったときの機械的な対応など、下請けとは違った問題があります」と語る。
また、自己責任で仕事をこなせるのであれば、自由を享受できるが、そうでない場合、淘汰されることになる。
原田さんが東京都の多摩地域でアマゾンフレックスの配達をしていたとき、倉庫にいる担当者から電話がかかってきて、「もう何時間経っても(残りの配達個数が)80個くらいから一向に減っていない人がいて、ヘルプに行ってください」と連絡がきた。行ってみると、50代の男性ドライバーで、端末も使いこなせず、地理感覚もなくて四苦八苦していた。原田さんはそのとき、20個くらいの荷物を預かって、代わりに配達することになった。