テレビがGWの混雑を喜々として報じる意外な訳 制作サイドにも視聴者にも楽しめる要素がある

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コロナ禍になって初めて行動制限のない大型連休となった今年のゴールデンウィークは陸路(左)も空路(右)も大混雑を見せました(写真:つのだよしお/アフロ)

長い人は「10連休」のゴールデンウィークも残りわずかとなりましたが、この間テレビでは連日さまざまな場所での混雑状況が報じられ続けていました。

特に目を引いたのは、各局の午前中に放送されている情報番組の取り上げ方。たとえば5月2日の朝、それぞれトップニュースで、「スッキリ」(日本テレビ)が「“制限ないGW”観光地の人出は」、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)が「3年ぶり行動制限なし GWハプニングも」、「めざまし8」(フジテレビ系)が「3年ぶり“制限なし”GW観光地大混雑」と報じました。

その後も、駅や空港の人出、高速道路の渋滞などに加えて、「盛況 餃子フェス大行列」「潮干狩り お父さんクタクタ」「世界遺産で撮影行列も」「上野動物園“双子パンダ”行列」「空から見た鎌倉&江ノ島 混雑は」「お台場『爆買い』新スポットに大行列」「横浜・浅草人出増」「巨大イベント大行列“日傘の花”」「TDL美女と野獣170分待ちも」「道頓堀 関西も人出増 長蛇の列」などと観光スポットの混雑状況が今なお報じられています。

さらに「スッキリ」は「GWおすすめ!グルメイベント生中継3DAYS」、「めざまし8」は「生中継GW混雑ぶりは?」という生中継企画を設け、「羽鳥慎一モーニングショー」は「GW規制なし3連休×2回 渋滞特徴は」という分析型の特集を放送しました。

特筆すべきは、これらを伝える側のMCやコメンテーターたちがうれしそうな顔をしていたこと。これまでなら「われわれは仕事ですが……」などと皮肉たっぷりに語るシーンが多かったのですが、なぜか今回は嬉々として報じているのです。

2年間、精神的に追い込まれていた

なぜ出演者たちはゴールデンウィークの混雑状況をうれしそうに伝えているのか。

真っ先に挙げられるのが、「ネガティブなニュースを報じなくていい」という安心感。この2年間、コロナ禍の重苦しいニュースを扱い続ける状態が続き、「絶対に感染してはいけない」という自身の感染予防対策も含め、出演者もスタッフも精神的に追い込まれていました。

実際、私が取材したある情報番組のスタッフは、「本当はもっと明るいニュースがいいのですが……」「自分の担当番組が何なのか、プライベートでは言えない」と嘆いていました。彼らは「コロナ禍ばかり報じるな」という批判とも戦わざるをえない状態が続いていたのです。

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