テレビがGWの混雑を喜々として報じる意外な訳 制作サイドにも視聴者にも楽しめる要素がある

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連休初日4月29日の羽田空港は観光客・帰省客でごった返していました(写真:つのだよしお/アフロ)

さらに今年は、ウクライナ情勢や、各地で頻発する地震のニュースが追い打ちをかけ、ここにきて北海道・知床の観光船事故も発生。3日、「めざまし8」の永島優美アナが、船上プロポーズを予定していた男性が交際相手にあてた手紙を読み上げながら涙をこぼしたことが話題を集めましたが、それだけ日ごろから精神的に追い込まれているということでしょう。

ただ、ゴールデンウィークに入ってから、コロナ禍、ウクライナ情勢、観光船事故のニュースは、報じるべき情報のみを伝えるストレートニュースのような形で最小限にとどめています。たとえばコロナ禍を扱う際も、「めざまし8」が3日に「韓国きのうから“屋外マスク解除”」というトピックスを報じるなど、これまでより明るい話題を挟もうとしている様子が伝わってきました。

前述した重苦しいニュースは、報じるべきものであり、視聴者ニーズもあるものの、さすがに長期化しすぎて、それを扱う側の人間が苦しくなっていたのでしょう。各番組は「3年ぶりの行動制限なしGW」と掲げていますが、出演者やスタッフにとっては「3年ぶりに普通の番組が戻ってきた」というポジティブな感覚があるようなのです。

「遊びに行けない」人のガス抜き

出演者たちがゴールデンウィークの混雑状況をうれしそうに伝えている2つ目の理由は、「ゴールデンウィークに遊びに行けない」ことのガス抜き。

ゴールデンウィークの期間中、これらの情報番組を見ている人は、基本的に「遊びに行かない人」、あるいは「行けない人」のどちらか。どちらにしても、遊びに行った人に対して、多少なりとも「いいな」「うらやましい」という気持ちを抱えている人は少なくありません。

このコラムを文字で読んでいる人は、「混雑状況なんてどこが面白いの?」と思うかもしれませんが、「行かない人」「行けない人」が映像として見ると、「行かなくてよかった」「これは最悪」などと思えてそれなりに楽しめるもの。言わば、家で情報番組を見ている視聴者が、「自分の現状を肯定できるもの」であり、それだけで放送の意義があるのです。

最もわかりやすいのが、高速道路を映した渋滞の映像。お出かけスポットの行列などは、並んでいる人々が楽しんでいるムードもありますが、渋滞を楽しんでいる人はめったにいません。「渋滞○km」という映像は情報としての役割だけでなく、つらそうな様子を見せることで「家にいる人が、ちょっとだけ胸がすく思いになってもらえたら」という意図も含まれているのです。

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