米国の利上げが想定内でもなお警戒が必要なワケ FRBの「タカ派姿勢」が和らぐための条件は?

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筆者は7~9月以降のFOMCにおいて、供給制約による価格上昇圧力が和らぎ、政策金利が中立水準に近づくにつれて利上げ幅を小幅に修正するのでは、と考えていた。だが、パウエル議長らFRBメンバーの発言を踏まえると、夏場以降も0.5%の利上げを続ける可能性が高まっているようにみえる。

利上げ加速に対する懸念は消えない

すでに日本のGW(ゴールデンウイーク)中の5月3~4日に開催されるFOMCにおいては、パウエル議長が明言した0.5%の利上げが織り込まれている。よって政策決定そのものがサプライズの決定になる可能性は高くない。

だが3月末以降のFRBのインフレ警戒姿勢の強まりを受けた、6月FOMC以降に大幅利上げを継続する可能性をパウエル議長は再び強調するかもしれない。筆者自身は現時点で可能性は低いとみているが、6月FOMCにおける0.75%利上げという「上げ幅の加速」に対する懸念が、早々に和らぐ可能性は低いようにみえる。

このため、FOMCを挟んだ日本のGW後も大幅利上げが意識され続けるなど、株式市場におけるFRBの政策への警戒感が大きく和らぐ可能性について、あまり期待しないほうがいいのではないか。

FRBのタカ派姿勢が和らぐには、FRBが十分と認識する程度の長期金利上昇が必要だ。それまでには、やや距離があるようにもみえる。

FRBのスタンスが変わらないのであれば、金利上昇が株価の上値を抑える状況は当面続きうる。経済やインフレの明確な鈍化が訪れるまで、アメリカ株を含めたリスク資産については、慎重に臨んだほうがいいかもしれない。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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