実際、これ以外にもパウエル議長は、6月FOMC以降もアグレッシブな利上げを行い、中立水準に政策金利を近づける意向を強調したのが大きかったとみられる。
まずは、「6月以降の金融市場の織り込みはおおむね適切」と、市場の大幅利上げ期待を追認した。金融市場における期待形成に対してパウエル議長らが直接的に言及する機会は多くないので、インフレ抑制のために1回の会合で0.5%の利上げを6月以降も続ける意思を強調したと評価できる。
また、パウエル議長は、インフレについては、「3月がピークとなることを当てにしていないし、サプライサイド改善の効果も当てにしない」とも述べた。3月分のCPI(消費者物価指数)の伸びがやや鈍化した際に、統計発表をうけてFRBのラエル・ブレイナード理事(上院で副議長昇格を承認済み)が「良い兆候」と発言した。これは、3月CPIの鈍化は中古車価格の下落が主たる理由で、政策判断に影響する可能性は低いが、インフレ圧力が和らぐ一つの材料にはなりえる。
年初からアメリカ株に慎重である理由とは?
それでも、パウエル議長は、単月のCPIの減速をほとんど評価せずに、インフレ圧力を引き続き示したうえで「需要を鈍化させるという仕事がある」と述べた。かねてから、これと似た趣旨の発言はあり、インフレ抑制を強化する姿勢を改めて示したと位置づけられる。
パウエル議長が、どの程度のアグレッシブな利上げを想定しているかを、一連の発言だけで推し量ることは難しい。だが「市場の利上げ期待」を否定せずに、敢えて言及している点を踏まえれば、市場が想定する以上のアグレッシブな利上げを想定している可能性は否定できない。
筆者は「アメリカ株は『懸念すべき投資先』になりつつある」(1月23日配信)でも示したとおり、年初から同国株に慎重な姿勢を示してきた。その理由の1つは、FRBが利上げと量的引き締めを早期に行うリスクの大きさを考えたからである。
FRBの現時点の金融引き締めに対するアグレッシブな姿勢は、筆者を含めた多くのエコノミストの年初時点の想定をかなり上回っている。早期に利上げを開始しただけではなく、1回の会合で0.5%以上のペースでの利上げを行う事態は想定されていなかった。
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