そもそも、なぜこれほどまでに円安が進行したのか。大きな要因の1つは日米の金利差が拡大していることにあり、かつ金利差は今後も広がり続けると多くの投資家が考えていることだ。
4月12日にアメリカの労働省が発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.5%となり、1981年12月以来、約40年ぶりの高水準となった。
これだけ物価が上昇してしまうと家計への悪影響が大きいため、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げることでインフレを退治しようとしており、FRBのパウエル議長も利上げや金融引き締めについては明言をしている。一方で、日本においては日本銀行の黒田総裁が金融緩和の継続を明言し、かつ利上げについては明確に否定している。
日本とアメリカの金利差が開くと円安・ドル高になる理由は単純で、金利が低い円を借りてきて、ドルを買えば円とドルの金利差はリスクなく稼ぐことができるため、ドル買い・円売りの動きが加速するのだ。これを「円キャリー取引」と呼ぶこともある。
以上の理屈を考えれば、日本も金利を上げて日米の金利差を縮小させれば円安に歯止めをかけられるじゃないかと思う方もいるだろう。実際に悪い円安論を強調する専門家はセットで金融緩和の終了も強調することが多い。しかし、アメリカは金利を引き上げることに耐えられる経済環境にあるのに対して、日本経済はそれほど強い経済環境ではないという認識を持つべきだろう。
本当に考えなければいけないこと
足元の円安について、前述のように日米の金利差拡大を理由として挙げがちだが、今回の円安の理由をそこだけに見てはいけない。よく日本経済を表す表現として「失われた30年」というものがあるが、根本的にはこの点をポイントとして挙げるべきなのだろう。
程度の差はあれ、他国が経済成長を続け、それに伴い賃金も上昇する中で、日本は経済が成長せず、賃金も上昇しなかった。更には非正規雇用の比率が高まり労働環境は不安定化し、少子高齢化・人口減少が進行してきてしまった。
さらに、コロナ禍やロシア・ウクライナ事案において、外国依存体質になってしまっていることが如実に表れてしまった。マスクもワクチンも国内では十分に作れず、食料やエネルギーは輸入に依存してしまっている。
円安の意味、円高と円安の判断の仕方など基本的な話から入ったが、足元の急激な円安の背景について、日米の金融政策の違いや、そもそもの日本経済の問題点など、幅広く思考を展開できるような経済脳を鍛えていきたいものである。
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