これだけは押さえたい「急激な円安」が進んでる訳 なぜ「悪い円安論」がこうも叫ばれるのか?

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この2カ月のうちに急速に「円安」が進んだことは理解できただろう。それでは、次に気になるのは私たちの生活にどのような影響があるのか、ということだ。

テレビや新聞など、メディアでは足元の円安を報じる際に「悪い円安」という表現を使うことが多い。メディアが大げさに煽っているように思う方もいるかもしれないが、4月15日の閣議後の記者会見で鈴木俊一財務相が、企業が原材料高を価格転嫁できず、国民の賃金も上がらない状況下での円安は「悪い円安と言えるのではないか」と発言している。

また、日本銀行の黒田東彦総裁は「悪い円安」と表現はしていないものの、4月18日の衆院決算行政監視委員会で「大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」と発言している。

円安のメリット・デメリット

筆者は本件に限らず、物事には良い面も悪い面も存在していると考えているため、あまりよくわかっていない段階でメディアの受け売りで悪い円安論に追従することは勧めない。まずは円安のメリットとデメリットを理解すべきだろう。

まずメリットとして最初に挙げられることが多い点は、輸出企業の価格競争力が上がるというものだ。そのほかにも、海外の資産に投資をしていた際に受け取る利子や配当も円に換算した時には増えるということや、海外からの観光客が増える可能性が高まることも挙げられる。一方でデメリットとしては、海外から輸入をするモノの値段が上昇するということが挙げられる。

このようにメリットとデメリットがあるなかで、なぜ今回は「悪い円安」という表現が使われるのか。それは、2011年前後の円高局面などで日本企業が生産拠点を海外に移してしまったことで従来ほどは、輸出企業が円安のメリットを享受できないことや、そもそもコロナ禍において円安だからといって海外からの観光客が増えることはないからだ。

一方で、コロナ禍における供給制約やロシアのウクライナ侵攻を受けてエネルギーや食品の価格が上昇しているなかで、急激な円安が進むことでさらに物価上昇圧力が高まってしまうというデメリットが目立つからにほかならない。

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