蘇ったJクルーが起こす、"ファッション革命" オバマ夫人、キャサリン妃までがファンに!

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とかくファッションというと、パリやミラノのファッションが頂点にあって、その影響、あるいは真似が安いファッションにも降りてくるものだと感じられている。軸はひとつなので、同じ価値観に沿って高いものが買える人とそうでない人がそれぞれに自分の財布に合った店で購入する。

だが、そうした格差とでも言うべき区分は、ことファッションにおいてはどんどん崩れつつあるのだ。多様な軸が存在していて、それぞれにユニークで、要は着る人の創意工夫こそが見せ所であり楽しみであるというアプローチだ。Jクルーも、ヨーロッパのファッションではなく、アメリカのファッションをみんなのために考え直した。そのことでライオンズは高く評価されているのだ。

「美人」の概念までが変わり始めた!

それと同時に、これまでの美人という枠も溶け始めている。ライオンズはこの点でも新軸を見せた。彼女自身「醜い少女」として育った。可愛い顔をしていない上に、持病のため小さい頃から髪が抜け、皮膚の色がまだらになる。入れ歯も余儀なくされた。学校ではいつもいじめの対象だったという。

4歳の子どもブロガーと一緒に服を作るライオンズ(JクルーHPより)

そんなライオンズは、自分がファッションに関係するとはつゆも思っていなかったという。だが、ある時、きれいなものに惹かれる自分を再発見した。そしてニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインでファッションを学び、卒業後Jクルーへ就職。下っ端のポジションからスタートして、少しずつ階段を上っていったのだ。

今もライオンズは決して美人ではない。大づくりの顔と高い身長。また、少し前に10年近い結婚生活を解消し、ゲイであることをカミングアウトした。ユニークな個性とクリエイティブな視点、そして無理をせず、美人ではない自分に心地よく収まっている人。そんなライオンズを、昨今のアメリカやファッション界はもっともクールな人物として捉えているのである。

Jクルーの刷新はアメリカから始まって、現在世界でも受け入れられている。ヨーロッパやアジアにも本格的に進出することが決まっている。大袈裟なことなしに、ファッションのあり方をすっかり変えてしまったその手腕。多軸的なライオンズのアプローチこそ、非常に現代的なのである。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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