シャープ、そろり近づく中計見直しの深刻度 金融支援継続に"必達目標"のはずが…

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業績悪化の要因は液晶パネルだけではない。シャープはスマホ向けカメラモジュールなどの電子部品事業も手掛けるが、「(海外顧客の)値下げ圧力が強まっており、輸出の円安メリットが効きにくくなっている」(シャープ関係者)という。

円安影響はこれにとどまらない。白モノ家電、太陽電池事業も、海外調達する部材の価格が円安で上昇し、採算が悪化している。シャープの高橋興三社長も、年頭の記者との懇談会で、白モノや太陽電池の状況を踏まえ、「(為替変動の業績影響は全社で)これまでニュートラルだったが、現状ではニュートラルというより、しんどい方向に行っている」と認めていた。

中計未達なら経営陣の責任問題にも

液晶パネルなど主力製品の競争激化と、円安の打撃――。この二つの懸念材料は、シャープの今後の成長に大きな影を落としている。というのも液晶はシャープの収益柱であり、「それ以外の事業で収益の牽引役は見つけにくい」(前出の小野氏)液晶が崩れれば、シャープの業績拡大の可能性は狭まり、さらに白モノや太陽電池などが円安で収益悪化すれば、その分シャープの業績は落ち込むことになる。

経営危機で資金繰りに詰まったシャープには、みずほコーポレート銀と東京三菱UFJ銀の主力2行が役員を派遣し、追加融資など金融支援の前提条件として、中計達成を“必達目標”として課していた。しかし、その未達が濃厚となってきている現状では、経営陣の責任問題が問われる可能性もある。

何より支援継続には、新たな成長シナリオの提示が不可欠だ。見えない危機の出口を、どう見つけるのか。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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