ただ、原油やLNGは、輸入と決済との間でタイムラグがありますので、原油下落の影響は今後顕著に表れ、それがしばらく続くのではないかと思います。
二つめのポイントは、円安がどこまで進むかということです。昨年8月から、円安ドル高が急速に進みました。それまで1ドル=102円前後で推移していたのが、12月にかけて1ドル=120円前後まで下落したのです。日本はエネルギー資源のほとんどをドル建てで輸入していますから、円安が進めば、その分、エネルギー価格が上昇します。
プラス要因とマイナス要因の「綱引き」に
つまり、今は「原油価格の下落」というコスト下落要因と、「円安」というコスト増加要因の綱引きになっているという構図で、原油価格の下落のほうが影響が大きい状況です。これら2つの要因は、今後どのように動くか予想が難しいですので、引き続き注意することが肝要です。
私は、原油安の状況はしばらく続くと見ていますが、一方、中長期的には円安ドル高が進むと考えています。短期的な視点で見ると、少し複雑な読み方になります。
ドル円レートに大きな影響を及ぼす日米金利差がいつから広がるかということも、なかなか読みの難しいところです。というのは、米国経済は好調に推移しているものの、消費者物価の上昇は落ち着いています。こうした状況から、イエレンFRB議長は、短期金利を上げるタイミングについて、少し余裕を持つことができるのです。
すると、日米の金利差が実際に開き始めるまで、少し時間がかかるかもしれません。利上げの時期がもう少し明確になるまでは、しばらく円安が進みにくくなる可能性があります。また、今回の原油安で日本の貿易収支が今後兆円単位で改善することは、円が強くなる要因です。
三つめのポイントは、原発が実際に再稼働されるかどうかということです。先ほども説明しましたように、特に関電は原発依存率が高かったわけですから、想定通り高浜原発が秋以降再稼働されるかどうかという点が、来期以降の業績に大きく影響してくると思われます。
四つめのポイントは、どれだけコストカットを進められるかということです。東電だけでなく、関電もコストのさらなる削減が急務になります。
現在の2社の財務的な安全性を調べますと、東電の自己資本比率(純資産÷資産)は13.1%、関電は15.8%となっています。高い水準ではありませんが、日銭が入ってくる業種ですので、安全水域に入っていると言えます。当面、安全性には問題ありませんが、収益の状況と、先に述べた四つのポイントには注意が必要です。
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