吉野家常務「生娘シャブ漬け」発言がマズすぎた訳 また炎上、上層部の言動だけに余計タチが悪い

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ところで、このところ企業の不祥事を繰り返さないために「3つのディフェンスライン」なる単語がよく使われる。これは文字通り、3つの防波堤を用いて企業人の不祥事を防ぐものだ。

たとえば、製造業の品質管理部門で不正試験がまかり通らないようにする。まず当事者である品質管理部門内で不正試験ができないようにする。これが1つ目のディフェンスラインだ。たとえば手入力で嘘の数値をインプットできないような工夫が必要だ。

そして、品質管理部門が虚偽の数字を提出しないように、たとえば設計開発部門が数値をチェックする。これが2つ目のディフェンスラインになる。

ただ、それでも品質管理部門と設計開発部門が蜜月で、現場の論理を優先して不正試験を許容してしまうことがある。そこで取締役会が直轄する監査部門が、その品質管理部門の数値を確認する。抜き打ちや年間監査などで実態を明らかにする。これが3つ目のディフェンスラインになる。

企業のガバナンスは、以上のディフェンスラインを駆使して現場の暴走や不正を犯さないように牽制している。

経営陣の不祥事はディフェンスラインを突破

ただ、ここで1つ問題がある。経営陣が意図的に起こした不祥事は、この3つのディフェンスラインがあろうが防ぎようがない。あくまでディフェンスラインは相互監査で不具合を起こさないようにしましょうね。という仕組みであって、経営上層部が意図的に先導したものはディフェンスできない。

そのぶん企業の取締役などの上層部には相当厳しい責任が問われる。株主が取締役を選び、取締役が代表取締役を選ぶ。企業を方向づける側が間違っていたら、一般社員も間違ってしまう可能性がある。

話を吉野家に戻す。冒頭の発言は一般社員ではなく、主導する取締役の立場からなされた。その意味は大きい。企業のガバナンス強化が叫ばれる中、非上場企業ならまだしも吉野家ホールディングスになんらか属している人物の発言である事実は、その反響からも衝撃が伝わる。たとえばアメリカ企業のフードサービス事業者が「移民の貧民に、薬漬けにして中毒にさせるのが自社のビジネスモデルだ」といったとしたらその反応はどうだっただろうか。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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