Jリーグ「パワハラ指導」元常勤理事が語る問題点 「厳しい指導は美しい思い出」は根本的な間違い
《もうそろそろ「厳しい指導方法」などと都合のいい言い訳に逃げることなく、パワハラ「指導」は「尊厳の迫害」そして「人権侵害」以外に解釈の余地などないことを、スポーツ界全体で再認識したい》
この文章を書いたのは、当時常勤理事だった佐伯夕利子さん。スペインでサッカーの指導者ライセンスを取得し、女性としても日本人としても初めて同国のナショナルリーグの監督を務めるなど、30年近い指導歴の持ち主だ。
佐伯さんの指摘はかなり踏み込んだものであり、それがJリーグの公式noteで発表されたことは、一部で驚きとともに受け止められた。
3月15日で2年勤めた常勤理事を退任した佐伯さんに改めて、スポーツ界のパワハラについて考えを聞いた。
パワハラは相当根が深いのではないか
――Jリーグで起きたパワハラについてどう思われましたか。
日本のスポーツ界でパワハラが相当数あることは認識していましたが、正直驚きました。
日本サッカーの最高峰である57クラブ(2022年は58クラブ)の中で、3年間に3件も裁定にかかったということは、相当根が深いのではないかと思っています。
今は日本サッカー協会に相談窓口がありますが、それでも言い出せない人がいるかもしれませんし、クラブは誰にでも起こりうることとして意識を高めなければならないでしょう。
――佐伯さんはスペインで長く育成年代の指導もされていました。日本のスポーツ界との違いはありますか。
私はこの2年日本の関係者に対し、折に触れて子どもたちにたくさんハグをしてあげてほしいと伝えてきました。西洋文化の子どもを見ていると、大人にめちゃくちゃハグをされて育っているんですね。
私がスタッフをしていたスペインのビジャレアルでは、コーチに対して、未就学児はゴールを決めたときも、練習でいいプレーをしたときも、とにかく1回1回抱きしめてあげなさい、と言うんですね。
子どもは理屈で言ってもわかりませんけど、ハグをされると安全だと感じてくれます。絶対的な安心感は、関係性を作るうえで土台になる部分です。しかし、日本にはスキンシップの文化が欠けているように思うのです。