空き家についてあたかも問題のように感じさせてしまったのが、野村総合研究所が2015年に出した空き家率予測だ。空き家問題で必ずといっていいほど引用された。そこでは、問題が今後急速に深刻になり、2033年には空き家率が30%を超えるというものだった(2013年の実績値は13.5%)。
しかし、この予測は大きくはずれた。2018年の空き家率を16.9%と予測していたが、実績は13.6%。住宅ストックは約180万戸増えたが、世帯数は150万世帯以上増えていて、空き家は26万戸しか増えなかった。人口は減っても、まだ世帯数は増えているし、住宅との対比は世帯数である。
また、この5年間の着工戸数は466万戸だが、住宅ストックが180万戸しか増えないのは、滅失(取り壊し)が286万戸あることになる。要は、世帯数予測と滅失戸数予測が正確にできていないだけだ。
実際に増えた空き家総数は26万戸だったのに対し、180万戸多い206万戸と予測し、約8倍も違った。この予測差は桁外れに大きい。
公表されている数字はいろいろあるが…
これ以外で引用されるのが、TASという会社の空室インデックスだ。数十%にも及ぶこの数字は賃貸住宅経営が立ち行かないように見える。しかし、この数字は通常では考えられない変な計算で算出されている。それは満室物件を除いて空室率を計算するというものだ。
A物件の総戸数が10戸で空室3戸、B物件総戸数の20戸で空室無しとすると、B物件を除くので、空室率は30%となる。しかし、実質は10%だ。
数字は整合性を取らないといけないし、誤解されないようにしなければならない。公表されている数字だけでもいろいろある。住宅REITの空室率は4%程だし、管理会社の団体である日本賃貸住宅管理協会の空室率(2020年度下期)は3%程だ。
明らかに実態と乖離した印象を持たれやすい数字には意味がない。
実際、東京都の2018年時点の空き家率減少が明らかになった。5年前の10.9%から10.4%に0.5%下がった。たった0.5%と思われるかもしれないが、これまで5年ごとに1%ずつ上がってきた過去から見ると、逆回転の様相を呈する。これを証明するように、家賃は値上げされているのが現実である。
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