「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある

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廃墟化した空き家の問題は、強制撤去できるようになっている。2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」では、次のように定義されている。

「特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」

この数がどの程度あるかというと、例えば、世田谷区の「世田谷区空家等実態調査」によると、調査した1492件中8件が「特定空き家」に該当していたという。率にして0.5%だ。問題視するには少ないので、空き家を全調査するよりも住民の苦情を発端にして対応したほうがいいような数字だ。

これらの結果から、空き家問題はデマに近い情報にすぎない。それよりも問題は築古のストックが今後急増することだ。また、そのストックの構造も木造から鉄筋コンクリート造に割合がシフトしていく。滅失することもなく残っていくが、快適に住める住戸は減っていく。

海外の先進国と比較しても意味がないワケ

この手の古いストックを問題視するときに、引き合いに出されるのが、海外の先進国の事例だが、日本とは根本的に置かれた環境が異なる。決定的に違うのは、地震の有無だ。イギリスではヴィクトリア朝時代(1837~1901年)に建てられた建物がいまだに有効活用されているし、入居者の人気もある。

しかし、イギリスでは大きな地震はほとんどない。建物がそれに耐える必要もなく、状態が大きく変わることもないから、利用し続けることができるが、日本ではそうはいかない。古い住宅はそれなりに傷んでしまうので、諸外国と比較しても意味がない。

世帯数は増え続けているし、一定量の滅失があるので、需給はタイトになる可能性のほうが明らかに高い。だからこそ、空き家よりも古い住宅ストックが増えていくことが問題であり、そこに住み続けられるかを問題視すべきである。

快適に住める環境とするには、リフォームがコスト高であるわりに物件自体に魅力(立地や外観など)がない。つまり、新しい家が必要だということで、空き家問題とはまったく逆の答えになる。

その認識に立たないと、新規供給が減り、需給バランスがいっそうタイトになり、その結果として私たちは持ち家価格(とくにマンション)の高騰と家賃の上昇に苦しめられることになってしまう。

沖 有人 不動産コンサルタント

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おき ゆうじん / Yujin Oki

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人系・不動産系のコンサルティング会社を経て、1998年に現スタイルアクトを設立。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティング・事業構築を得意とする。設立当初から運営する分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の会員数は30万人以上。『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書)など著書多数。

 

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