元FBI捜査官が教える「子どものウソ」を見抜く技 「第三者話法」を使えば職場の不正も明らかに

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この返答が、私には気になった。たしかに私が話したのは第三者の例だったが、彼は自分なりに質問の意味を考えてから、返答をした。そしてまったく自覚しないまま、本心を漏らしてしまったのだ。自分の仕事に見合うだけのカネが得られないのなら、もっと高額の報酬を払ってくれる相手に情報を売るまでだ、という本心を。

このとき私としては「あなたに忠誠心をもっています。ですから、どれほどカネを積まれようと、あなたを裏切るような真似はしません」と言ってほしかったのだ。しかし、彼はそう言わなかった。この日から私は、このスパイの忠誠心は「売り出し中」だと覚悟して、行動に目を光らせるようになったのである。

会社の備品をくすねている社員を見わけるには

「第三者話法」は職場でも活用できるテクニックだ。たとえば、部下が会社の事務用品をくすね、こっそり自宅に持ち帰っているのではないかと、あなたが疑っているとしよう。あるいは、そうした傾向が部下にあるかどうか、知りたいとしよう。

その場合、「君は事務用品をくすねているかね?」と尋ねたところで、「まさか、そんなことはしていません」といった答えが返ってくるにきまっている。だから、ほかの会社の従業員が備品を持ち帰っているというシナリオをつくり、その行為に関する感想を尋ねれば、本心を聞き出せる確率が高くなる。その場合、次のようなやりとりになるだろう。

マネジャー: 他社に勤めている友人から聞いたんだがね、部下が会社の備品を自宅にこっそり持ち帰っていて、頭が痛いそうなんだ。どう思うかい?
社員:自分の所有物ではないモノを持ち帰るような人間に、ろくなやつはいません。厳しく罰するべきですよ。

この社員の返答は第三者の行為に対する感想なので、本心だろう。つまり、ウソをついていない確率がきわめて高くなるのだ。

(翻訳:栗木さつき)

ジャック・シェーファー 心理学者、ウェスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント

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心理学者、ウェスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント。FBIではスパイ防止活動とテロ対策の捜査官を15年、「行動分析プログラム」の行動分析官を7年務めた。現在はアメリカ本国はもとより、世界各地で講演会を行っている。

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マーヴィン・カーリンズ サウスフロリダ大学ムーマ・カレッジ・オブ・ビジネス経営学教授

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Marvin Karlins

プリンストン大学で社会心理学の博士号を取得。世界各地でコンサルティング業を展開。

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