新型コロナウイルスの世界的大流行をきっかけに、海外で学んだ留学生が中国に帰国して就職先を探すケースが増えている。中国政府の国家情報センターの推計によれば、海外の学校を卒業後に(外国で就職せず)帰国した留学生は2021年に初めて100万人を超えた。
一方、中国国内の大学(高等職業学校などを含む)の新卒者数も増え続けており、2022年は初めて1000万人を突破する。このため、留学帰国者と国内新卒者が同時に就職戦線に参入し、競争が激しくなっている。
求人情報サイトの智聯招聘が留学帰国者を対象に実施した調査によれば、回答者の83.1%が国内就職の難度が上がったと感じていた。その理由の上位3つは「帰国者の増加で競争が激化した」「国内企業にとって留学帰国者の魅力が減った」「就職戦線が全体的に厳しさを増した」だった。
実際、留学帰国者に対する国内企業の採用意欲は以前より低下している。これまで留学帰国生を積極的に採用してきたのは、主に(不動産会社やインターネット企業などの)民営企業だった。しかし智聯招聘の調査によれば、民営企業が「留学帰国者優先」の条件付きで出した求人件数は、2021年は前年より2.3%減少した。
「国内新卒者と人材レベルに大差なし」
企業の採用意欲が落ちている背景には、企業側が期待するスキルと留学帰国者が海外で学んだスキルのミスマッチがある。財新記者の取材に応じたある不動産会社の採用担当者は、帰国留学生が学んだのは「海外基準の知識であり、中国の国内市場では使い物にならず、採用後に再教育しなければならない」と話す。
さらに、新型コロナの世界的大流行がミスマッチに拍車をかけた。国境を跨いだ人の移動が困難になったため、海外の学校に入学した中国人学生の多くが現地に行けず、国内でオンライン授業を受けている。
「彼らは外国の文化を深く体感したり、海外の(知識や人脈などの)リソースを蓄積したりするチャンスを失った。これでは、留学帰国者と国内新卒者の人材レベルに大きな違いはない」。あるハイテク企業の採用担当者は、そう率直に指摘する。
中国の国内景気が減速するなか、初任給の相場の違いも留学帰国者にとって不利になっている。複数の民営企業の採用担当者は、財新の取材に対して次のように本音を語った。
「国内の大学新卒者の初任給が月額5000元(約9万6207円)とすれば、留学帰国者は6000元(約11万5448円)が相場になっている。どうしても留学経験者でないと勤まらない職位を除けば、企業は(人件費を抑制するために)国内新卒者を選ぶことになりがちだ」
(財新記者:王詩涵,周魯青,範俏佳)
※原文の配信は4月3日
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