中国の大学新卒者の就職戦線が、かつてなく厳しい状況を呈している。中国教育省の統計によれば、2022年の大学卒業生(訳注:高等職業学校などを含む。卒業月は2022年6月)は前年比167万人増の1076万人と、初めて1000万人の大台を突破。総数でも前年比の増加数でも過去最大だ。
その一方、企業側では採用計画の縮小が相次いでいる。2021年後半からの景気減速や、特定の業界に対する中国政府の規制強化などのあおりを受け、大学新卒者を大量に採用していた不動産、学習塾、インターネットなどの業界で多数の企業が苦況に直面。新卒者を受け入れる余裕がなくなっているためだ。
「ネット企業や銀行など、自分が就職を希望する業界の採用活動はもう終盤に入った。でも魅力のある職場はなかなか見つからない」。中国人民大学で経済学を専攻するある4年生は、財新記者の取材にそう嘆いた。
中国国家統計局のデータによれば、16~24歳の若者の2022年2月の失業率は15.3%に上る。同月の中国都市部の平均失業率は5.5%であり、若者の就職難が極めて深刻な実態を示している。
人材市場に構造的ミスマッチ
「大学新卒者への企業の求人件数が減るなかで、新卒者の求職件数は逆に増えている。就職難は今後かなりの期間続くだろう」。求人情報サイトの智聯招聘の執行副総裁(副社長に相当)を務める李強氏は、就職戦線の現状をそう解説する。
李氏の見立てによれば、目下の就職難の主因は企業の求人不足より、人材市場における需要と供給の構造的ミスマッチにある。「なぜなら、市場全体では求人件数が求職件数を上回っているからだ」(李氏)。
河南省の高等職業学校をもうすぐ卒業する高一瑋さん(仮名)は、典型的なミスマッチの実例だ。旅客機の客室乗務員になるための専門知識を学んだ高さんは、就職活動の実情をこう話してくれた。
「入学する時は、学校から『卒業後はすぐに旅客機に乗務できる』と説明された。でも(航空業界で)いま見つかる就職先は、空港の駐車場の警備員くらいしかない」
高さんは客室乗務員以外の仕事も探したが、企業からは「専攻分野が合わない」との理由で採用を断られた。残された数少ない選択肢のひとつは、(採用時に専攻分野を問わない)工場労働者になることだ。しかし高さんは(心理的に)受け入れられず、こう溜息をついた。
「結局工場で働くなら、自分は何のために高等教育を受けたのか」
(財新記者:蔡静遠、範俏佳)
※原文の配信は3月30日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら