多くの現代若者が苦しむ「望まぬ孤独」悲痛な実態 「消えたい」「死にたい」という声が途切れない

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1年間の留学から帰国すると、母の2度目の離婚と離職によって家庭の経済環境が一気に悪化した。大空さんは高校生にもかかわらず、夜勤のアルバイトをせざるを得なかった。そして、帰国から2カ月後、大空さんは深夜に担任の先生にメールを出し、「学校をやめます。死にたいと思っています」と告げた。

翌朝、担任の先生が大空さんのアパート前に立っていた。これが大空さんの転機だった。

アパートに来てくれた先生に自らのことを語り、聞いてもらい、高校へも通い始める。その後も幾度となく、担任の先生と話し込んだ。身近に頼れる人ができた。近くに相談できる人、頼れる人がいることの大切さ。それを心から実感しているのが、大空さん自身だ。

「誰であっても頼れる人に相談できる環境が必要。それを作りたい」

NPO法人の原点はそこにある。

大空幸星さん(写真:本人提供)

「誰かとつながりを持ちたい」という感情は生理現象

――「孤独」とは、どんな状況、どのような意味を指すのでしょうか。

実は、「孤立」と「孤独」はまったく異なる意味を持ちます。「孤立」は自分の選択肢で、1人になることです。

例えば家族やコミュニティと接触がほとんどないことを指します。一方、「孤独」とは自分で意図せず、1人になることです。自分は他人と結びつきを持ちたいのに、現実はそうならない。そのギャップから孤独が生じてしまうから、孤独は苦痛を伴うのです。

「あの人はいつも笑顔で楽しそうだ」と他人から見えている場合でも、実際は家庭内暴力など何かに苦しめられていて、相談できる人がいないというケースもあります。「弱みを見せてはいけないと育てられてきたから」というケースもあるでしょう。家族や友だちがいても、誰にも頼れないため、孤独となっているケースがコロナ禍で多くなっているのです。

「孤独を愛せ」「孤独が人を強くする」。こんな文言を耳にしたことも多いのではないでしょうか。歌詞などによく使われがちですね。この文言は、孤独を押しつけているにすぎません。誰かとつながりを持ちたいという感情は生理的な現象です。

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