多くの現代若者が苦しむ「望まぬ孤独」悲痛な実態 「消えたい」「死にたい」という声が途切れない
よく、若者は活発だね、と一括りにされますが、声を上げられる人と上げられない人との溝が深まり、若者の間に分断が起きているのです。気候変動のデモで高校生が「これ以上の豊かさはいらない」と話していました。ただ、彼らは、経済的に豊かな家庭出身で、高水準の教育を受けているケースが多い。豊かなのはほんの一部です。
日々生きることに精一杯で明日に食べるものを心配したり、お金をやりくりするのに体を売らなければならないと追い込まれていたり。そんな若者もたくさんいるんです。そんな彼らの苦しい現状を今こそ、知ってもらいたいと”分断”という言葉を使い、発言しています。
――「あなたのいばしょ」にはどんな人から相談がきていますか。
相談は1日に700件以上あります。10~20代からが最も多く、29歳以下の人が8割を占めています。男女比では女性が7割。その中でも特に、女性の非正規雇用者からの相談が多いです。コロナ禍によって、格差のしわ寄せがきたからでしょう。
相談件数が増えているため、つねに人手不足です。けれども、捉え方を変えると、多くの人たちに使ってもらっている証拠。僕たちは完全チャット形式なので、素性がバレずに相談ができるという利点がありますから。匿名式の相談こそ、現代社会において意味があると考えています。”頼ることが恥”という意識が、今の社会に根付いているからです。
それでも、社会は少しずつ変わっていると思います。政府は2021年2月に、孤独・孤立問題に取り組む官僚級ポストを世界で初めて設置し、本腰を入れての問題解決に乗り出しています。
同じ年の12月28日に策定した重点計画では、「孤独・孤立は人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るもの」としたうえで、「社会全体で対応しなければならない」と述べています。官民連携で電話やSNSを使った相談体制を整備するほか、地域の居場所づくりに力を入れることも盛り込まれました。
ネグレクトされた自身の10代がベースに
NPO法人「あなたのいばしょ」の立ち上げ背景には、大空さん自身の過去が深く関わっている。自身は育児放棄(ネグレクト)の家庭環境で育ったという。
小学5年のある日、学校から家に帰ると母親の姿がなかった。離婚してしまったのだ。地域柄、離婚について敏感な雰囲気が漂っていたせいか、友人らに家庭事情の話をすることはなかった。母親が家を出たあと、もともと折り合いが悪かった父親との仲はさらに険悪になった。小学生なのに大の大人である父親と殴り合いのケンカに発展したこともあった。
6年生になると、心身の不調が極まり不登校に。食事を取れなくなり、中学1年生の春には、入院することになった。そこから自殺を考えるようになったという。退院後は、父の元を離れ、母とその再婚相手と暮らしたものの、母たちは多忙のため中学卒業まで、1人で晩御飯を食べていたという。もちろん、学校に通わないことのほうが多かった。
入院時の医師の勧めで、留学制度がある高校に進学した。母親のネグレクトは続き、留学時の大切な面談にも来なかった。担任の支援もあり、ニュージーランドに無事留学した。費用は父親の祖母の遺産を使った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら