6年間「死体役」をやり続けた彼女が見つけた道 サヘル・ローズさん、目標は遠くに置くといい

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そして、「失敗することこそが成功だ」と思って、まずは一歩踏み出してみる。何かをやろうとすると、批判をしたり、鼻で笑ったりする人が出てくるけれど、笑わせておけばいいです。「いつか、その人たちの声が届かない位置に行くんだ」と心に誓って、ただひたすらに前を向いて歩いていけばいいと思います。

夜寝る前に、私がいつも思い描いているのは、「未来の自分がいる位置」です。自分がどこを目指しているのか。目を瞑って、そのビジョンをありありと描きます。脳は、イメージした場所に向かって、進む手助けをしてくれますから。大切なのは、「自分にはできるんだ」って、信じてあげることです。

混迷の時代を生きる新社会人に伝えたいこと

――長引くコロナの影響により、経済状況が厳しくなる中、新社会人として新たな一歩を踏み出した方たちに、ぜひメッセージを。

コロナ禍や不安定な世界情勢によって、これから先、経済的に厳しくなる恐れもあるでしょう。仕事においても対面でのコミュニケーションが減っている中、相手の表情から真意を読み取ることが難しく、特に新人の方は不安や戸惑いをおぼえる場面も少なくないかもしれません。

 サヘル・ローズ/俳優・タレント。1985年イラン生まれ。幼少時代に孤児院で生活し、フローラ・ジャスミンの養女として7歳のときに引き取られる。8歳で養母とともに来日。高校時代から芸能活動を始める。俳優として映画やテレビ、舞台に出演するほか、レポーターやコメンテーターとしても活躍。国際人権NGOの「すべての子どもに家庭を」の活動で親善大使を務めるなど、これまでの福祉活動が評価され、アメリカで人権活動家賞を受賞。著書に最新刊の『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』(講談社)のほか、『戦場から女優へ』(文藝春秋)などがある(撮影:尾形文繁)

でも、この混迷の時代に歩き出した新社会人の方たちは、一つ二つとハードルが高い分、何倍もの成長ができると感じています。今、直面している壁ややりづらさをどう工夫して乗り越えていくか。厳しい時代を生き抜いた経験は、これから数十年先に自慢できる財産になると思います。ある意味、ポジティブに捉えてみるといいんじゃないかなと。

『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』(講談社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

私たちはありがたいことに、平和な日本で暮らすことができています。確かにジェンダーの不平等の問題は根強く残っていますが、それでも男女ともに均等に学べる機会があり、それぞれが自由な発言ができる環境にあります。世界の国々と比べたら、恵まれていると思うのです。その恩恵に今一度目を向けてみると、見方が変わるかもしれません。

もちろんこれから働いていく中で、疑問や葛藤も出てくると思います。そうしたら、ノートに書いてみるといいですよ。日々感じること、苦しいこと、本当はこうなりたいと思うこと。特に、こうなりたいという目標は、自分の目に見えるところに書いておくのがおすすめです。

どうか新社会人の皆さんが、自分が信じる道を、生きたい人生を力いっぱい歩むことができますように。

前回:『戦禍で身寄りをなくした36歳彼女の目に映る「今」』

伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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